9月19日妥当レンジ 19,800円~21,400円
欧米の感染再拡大で輸出関連には逆風か
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米大統領選を織り込み始める展開>
■週明けの21日は欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大と、主要国での行動制限の強化を受けて、欧州株式市場が大幅下落。それを受けて、米国市場も下落した。リスク回避からドル円は104円ちょうどまで円高が進んだ。22日は落ち着きを取り戻しているものの、欧米での感染再拡大には注意を要する。
■もう一つの懸念材料が11月に迫った米大統領選である。民主党候補のバイデン元副大統領は、連邦法人税率の引上げ(21%→28%)、グローバル企業にはタックスヘイブンでの節税を防止するミニマム税の導入、富裕層の株式譲渡益課税は20%→39.6%に引き上げるなど増税を掲げる。企業の一株益の減少の他、富裕層の株売却など株式市場にはマイナスインパクトが大きいと見られる。
■トランプ大統領は、動画配信アプリ「TikTok」を巡って米国側が主導権を持つか、さもなくば廃止という強攻姿勢をとる。19日時点ではオラクル、ウォルマートが出資する提携案で基本合意し、トランプ氏も承認する意向を示した。しかし、中国人民日報系の環球時報は21日、「中国政府が承認する可能性は低い」とする社説を掲載、さらに紆余曲折がありそうだ。また、対話アプリ「ウイーチャット」の提供を禁止する大統領令に対して、米カリフォルニア州北部地区の連邦地裁が大統領令の執行を一時的に差し止める判断を示した。
■中国商務省は、19日に中国企業に不当に損害を与えたと当局が判断すれば外国企業に対して中国との取引を制限・禁止できるようにする規則を公布した。これは15日に発効された米商務省のファーウェイへの半導体輸出規制やTikTokなど米国による中国企業への規制に対抗するものと考えられる。米中の対立の深化が日本企業にも波及する可能性があるだけに注意が必要だ。
■世界的な金融緩和継続の流れが変わらないだけに株式市場は大きく下押しする可能性は低いと考えるが、新型コロナウイルスの感染再拡大や米大統領選の行方、米中対立の激化などリスク要因も増加しており、模様眺めの展開が続きそうだ。
■18日時点の日経平均の参考値(リスクプレミアム6.0%で算出)は前週と変わらず23,300円である。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,800円~21,400円 | (前回19,800円~21,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月19日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月19日)
今期予想EPS | 965.68円 | (前週970.19円) |
来期予想EPS | 1250.03円 | (前週1253.16円) |
再来期予想EPS | 1440.19円 | (前週1440.07円) |
今期予想PER | 24.19倍 | (前週24.13倍) |
来期予想PER | 18.69倍 | (前週18.68倍) |
再来期予想PER | 16.22倍 | (前週16.25倍) |
来期予想PBR | 1.07倍 | (前週1.07倍) |
来期予想ROE | 5.75% | (前週 5.75%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.56% | (前週 5.55%) |
9月19日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(RP=リスクプレミアム 6.0%)の日経平均株価は前週と変わらず 23,300円。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.3%→44.0%→47.7%→48.8%→42.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.2%→44.7%→47.8%→49.4%→47.2%。
来期ベースは18週連続、再来期ベースも16週連続で50%割れ。節目となる50%を目前に再び下降。ただし、時間の経過によって、来期から再来期に徐々に視線が向かうことを鑑みれば、株価の大崩はないと考える。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |