9月4日妥当レンジ 19,800円~21,300円
コールオプションによる米国株の調整は一時的

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<ソフトバンクGが約40億ドルのコールオプション保有?>
■3日から3営業日連続で米国株が下落した。8月の上昇を主導していたのがハイテク株の上昇であったが、その過程で取引が急増したコール(買う権利)・オプションに逆回転のリスクが懸念されたことによる。4日に米WSJなどが、ソフトバンクグループが約40億ドルのオプション(現物株換算で約500億ドル)を保有していることが報じたこともハイテク株の下落に拍車をかけた。
■8月の米雇用統計(4日発表)は、失業率が8.4%と前月から1.8ポイント改善、市場予測(9.8%)も大きく下回った。ただ、労働者人口が減少しており隠れ失業が増えているとの見方もある。
■パウエルFRB議長は4日のインタビューで、「低金利政策は何年も続く」と述べた。労働市場の回復には時間がかかることなど景気回復には時間がかかることから、低金利政策を継続する姿勢を示している。また、連邦政府債務の増加ペースは持続不可能としながらも、財政健全化は雇用が回復した後であると強調し、政府の追加経済対策を求めた。

<低金利下における株価バリュエーションの認識広がる>
■市場では低金利の持続から株価バリュエーションの見方に変化が生じてきている。イールドスプレッド(株式益回りと長期金利の差)が3.6%では株式の割安感が強く、債券高(=低金利)が続く限り、株高は続くとの見方だ。景気の下支えを目的に各国で財政出動が続くことも金余りを持続させる。
■8月の中国貿易統計(ドル建て・7日発表)では、輸出は前年同月比+9.5%と3ヵ月連続で増えた。米国向け、欧州向けが拡大。中国経済の立ち直りが明確になりつつある。
■本日(8日)発表の8月の景気ウオッチャー調査(国内)において、現状判断DI43.9(前月比+2.8ポイント)、先行き判断DI(同+6.4ポイント)と上昇。やや明るさが見えてきた。今週は目立った経済指標の発表もイベントもない。米国株式市場の動揺が収まれば日本株も強含みの展開に回帰するものと考える。4日時点の日経平均の参考値(リスクプレミアム6.0%で算出)は23,200円である。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,800円~21,300 (前回19,500円~21,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月4日)

今期予想EPS 979.98 (前週997.59円)
来期予想EPS 1256.24 (前週1253.17円)
再来期予想EPS 1443.41 (前週1435.76円)
今期予想PER 23.68 (前週22.94倍)
来期予想PER 18.47 (前週18.26倍)
再来期予想PER 16.08 (前週15.94倍)
来期予想PBR 1.07 (前週1.06倍)
来期予想ROE 5.81% 前週 5.82%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.60% (前週 5.61%)

9月4日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

参考値(RP=リスクプレミアム 6.0%)の日経平均株価は、23,200円とほぼ現水準と一致。
当面は参考値を軸に考えた方が良いのかもしれない。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.842.643.344.047.7
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.249.247.244.747.8
来期ベースは16週連続、再来期ベースも14週連続で50%割れ。しかしながら、予想EPS
は若干であるが上向いており、回復感はある。ただし、足もと(今期)は一段悪化。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。