7月17日妥当レンジ 19,800円~21,400円
米・EUの経済復興対策から経済失速は回避されたが

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<欧州連合の復興基金案成立へ>
■前回の当レポートで注目ポイントとした中国の小売売上高(6月分・16日発表)は、前年同月比▲1.8%であり、市場予想(±0.0%)を下回った。雇用の弱さと消費マインドの冷え込みを示す内容であった。米国の新規失業保険申請件数(7/11終了週)は130万件と前週(131.4万件)から微減に留まった。7月4日までの週の失業保険給付総数1,733万人と高止まりを続けており、今後の推移を注意深く見守る必要がある。
■17日に開幕した欧州首脳会談では中心議題であった7,500億ユーロの復興基金案が、難航したものの、会期を延長した21日早朝に合意に達した。欧州委員会が市場から資金調達し、補助金と融資とで南欧を中心に支援するという内容である。
■米国ではトランプ政権と議会が新型コロナウイルス対策の第4弾となる財政出動を7月中にも可決する見通しである。追加対策の規模は2兆ドルが見込まれており、7月末にも期限切れとなる失業保険の特例加算延長に充てるほか、再就職の際にボーナスを支給する案などが検討されている模様。財政の崖は回避できる模様である。米・EUともに経済対策が発動されることによって足もとの経済失速は回避されたと考える。
■今週は目立った経済統計の発表はないが、米国では新型コロナウイルスの感染再拡大によって、再び飲食店の営業規制などに踏み切る州も出てきており、経済活動停滞が危惧される。各種のPMIなどから企業のマインドに注意を払う必要がありそうだ。

<企業の業績予想開示は「吉」と出るか?>
■4-6月期決算発表を控えて、アナリストコンセンサス予想は再び下方トレンドを強めた様相にある。東京を始めとした新型コロナの感染者数拡大から「GO TO Travelキャンペーン」が迷走するなど、V字回復への期待も後退しつつある。
■今週は4連休を控えて東京市場では方向感のある動きは出ないものと思われるが、来週から本格化する決算発表において(本決算で)業績予想開示を見送っていた企業による予想開示が見込まれる。特段慎重な内容でなくても市場に現実を突きつけることで一時的な調整局面があるかもしれない。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,800円~21,400 (前回19,500円~21,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月17日)

今期予想EPS 1006.33 (前週1025.29円)
来期予想EPS 1268.24 (前週1275.66円)
再来期予想EPS 1454.17 (前週1458.10円)
今期予想PER 22.55 (前週21.74倍)
来期予想PER 17.90 (前週17.47倍)
再来期予想PER 15.61 (前週15.29倍)
来期予想PBR 1.05 (前週1.02倍)
来期予想ROE 5.89% 前週 5.86%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.74% (前週 5.78%)

7月17日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

PBR1.0倍(21,015円)の水準が下値サポートラインと考えているが、第1四半期が赤字となる企業も多いと予想され、その水準が低下することも考えられる。上値は国内での感染拡大もあり、暫くは重い状態が続くと考える。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 29.237.641.942.536.8
再来期予想ベースのプラス企業比率は、42.746.545.549.541.8
来期ベースは9週連続、再来期ベースも7週連続で50%割れである。1Q決算を踏まえてやや上昇傾向が一服。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。