6月5日妥当レンジ 20,200円~21,800円
「新常態株高」は、中央銀行の正常化まで続く?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<株価チャートの酷似は金融相場を物語るのか?>
■8日のNYダウ工業株30種平均は27,572.44ドルと前日比+1.70%の上昇となり、コロナ禍による株価下落前(2月13日)に対して93%の水準まで戻した。日経平均株価(6/8)も2月6日の高値に対して96.6%の水準まで戻している。
■日経平均のコンセンサスEPSを2月7日時点と先週(6/5)とで比較すると今期(2/7時点では来期)は1374.83円→1085.94円と▲21.0%減少、来期(2/7時点の再来期)は1496.05円→1325.80円へと▲11.4%の減少となっている。2月上旬時点の株価水準が正しかったとしても、企業業績の観点からは既に妥当な水準を超えてしまっている。
■NYダウ、日経平均株価さらに独DAXの6ヵ月チャートを重ね合わせてみると驚くほど同じ動きであることが分かる。米、欧、日ではコロナ感染が拡がるタイミングや深刻化の度合いが異なるにもかかわらず不思議なほど近似している。このことは、個別の国(地域)のファンダメンタルはあまり関係なく、グローバルマネーの動きによって株価が形成されていることを端的に物語っている。
■2月上旬の水準に近づいたところでグローバルマネーはどのように動くのであろうか? 米ISM製造業景気指数(1日)、ISM非製造業景気指数(3日)ともに5月はやや上向いた。5月の米雇用統計(5日)は従前20%近い失業率が予想されていたが、13.3%と4月(14.7%)から回復した。米景気は最悪期を通り過ぎて回復に向かっているとの見方が強まっている。他方で、仮に経済が停滞するようであればFRBや政府の金融・経済対策が追加的に発動されるとの楽観もあるようだ。そういう意味では、経済指標に対して、良い内容にはポジティブに反応し、悪い内容にもネガティブには動かないと思われる。
■株高の背景には、低金利による債券から株式への資金シフトが大きな要素であるならば、今後注視すべきポイントは米長期金利の動きであろう。米10年国債利回りは4月下旬から6月初旬まで0.6%~0.7%が続いてきたが、雇用統計を受けて0.8%台とやや上昇傾向にある。9-10日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されているが、パウエル議長の景気に対する見解に注目が集まりそうだ(回復に自信を込めれば株安)。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,200円~21,800円 | (前回19,800円~21,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月5日)
今期予想EPS | 1085.94円 | (前週1106.12円) |
来期予想EPS | 1325.80円 | (前週1334.77円) |
再来期予想EPS | 1480.75円 | (前週1485.26円) |
今期予想PER | 21.05倍 | (前週19.78倍) |
来期予想PER | 17.25倍 | (前週16.39倍) |
再来期予想PER | 15.44倍 | (前週14.73倍) |
来期予想PBR | 1.07倍 | (前週1.03倍) |
来期予想ROE | 6.23% | (前週 6.30%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.03% | (前週 6.23%) |
6月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
6月5日時点の今期コンセンサス予想PER 21.05倍、来期 17.25倍、再来期15.44倍。8日の日経平均終値23,178円は、2月6日高値(23,995円)の96.6%の水準であり、割高感は否めない。市場はミニバブルの様相を強めており、ファンダメンタル(企業業績)との乖離が広がっている。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.7%→55.3%→35.2%→45.5%→31.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.0%→53.1%→47.0%→54.0%→41.5%。
再来期ベースも再び50%割れ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |