12月30日妥当レンジ 21,100円~22,900円
地政学リスク顕在化で、悪材料に過敏な展開続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<株価は上下に大きく振れながらも下降トレンド入りか>
■昨年12月31日にトランプ大統領は中国との貿易交渉「第1段階」の合意について1月15日に署名式を開くと発表。この時までは、市場は楽観ムードを維持していた。2日に米国がイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害、一気に地政学リスクが高まった。
■「復讐を行う」というイランに対して、それを部隊派遣で牽制する米国。イラク議会もまた米軍を念頭とした外国部隊の駐留を終わらせる決議案を採択し、イランだけでなくイスラム教スンニ派が支配する地域での反米感情が極限に達しつつある。
■本格的な戦闘状態に陥る懸念や(封鎖の可能性も含んだ)ホルムズ海峡に対する危機感から原油価格も高騰し、それが世界経済の減速懸念を強めている。当面は、中東情勢を睨みながら、悪材料に敏感な市場展開が続くと考える。
■3日発表の12月の米ISM製造業景況指数は、47.2と予想(49.0)を大きく下回り、09年6月(46.3)以来の低水準であった。米中の「第1段階」合意によって、今後はやや上向くとの見方もあるが楽観は出来ない。今週は、ISM非製造業景況指数(7日)、ADP雇用統計(8日)、米雇用統計(10日)と米国経済指標の発表が続くが、予想を下回れば敏感に株式市場が反応する可能性も考えられる。

<「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比マイナス>
■年末でサンプル数が少ないことからトレンドとして捉えるにはやや不十分であるが、 「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、4週連続で全期間でマイナス。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は再来期ベースが再び50%割れとなった。
■株価は6日に大きく下落したものの依然として妥当レンジを上回る水準にあり割高感がある。センチメントの悪化と業績回復への期待剥落により、上下に振れ幅の大きな波動を描きながらも下降トレンドを描くと考える。あまり考えたくはないが、最悪のシナリオ(戦闘の本格化?)ではPBR1.0倍の20,394円を想定する。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,100円~22,900 (前回21,300円~23,000円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月30日)

今期予想EPS 1261.50 (前週1264.81円)
来期予想EPS 1386.47 (前週1388.68円)
再来期予想EPS 1507.03 (前週1509.66円)
今期予想PER 18.75 (前週18.83倍)
来期予想PER 17.06 (前週17.15倍)
再来期予想PER 15.70 (前週15.78倍)
来期予想PBR 1.12 (前週1.13倍)
来期予想ROE 6.55% 前週 6.57%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.31% (前週 6.29%)

12月30日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


株価はまだ割高感が強く、地政学リスクの顕在化でまだ調整余地大きい。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.538.645.646.748.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.947.246.752.9%→45.9
サンプル数が少ないものの、来期・再来期ベースでは50%を下回る(今期は50.8%)。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。