11月29日妥当レンジ 21,000円~22,800円
米国経済指標と米貿易中協議の行方に揺れる展開

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中貿易協議の行方と11月の雇用統計>
■先週は、11月27日にトランプ大統領が「香港人権・民主主義法」に署名したことを受けて、中国の反発から一時的に緊張が走ったものの、同日発表の米FRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)において、景気判断がやや引き上げられたことや、7-9月の米GDP改定値が速報値より0.2ポイント上方修正されて+2.1%となったことなど米国経済に対する明るいニュースによって掻き消された感がある。28日から始まった米国年末商戦でも堅調な売上が予想されている。
■中国製造業景気指数(PMI)も国家統計局(30日)、財新・マークイット(2日)ともに市場予想を上回り、国家統計局分においては4月以来の50台(50.2)を回復した。
■こうした楽観に水を差したのが、昨日(2日)発表された11月の米ISM製造業景気指数。前月より0.2ポイント低下の48.1と4ヵ月連続で節目と言われる50を下回った(予想は49.2)。
■今週は米国の主要統計の発表が続く。4日:ADP雇用統計、ISM非製造業景気指数、6日:雇用統計(いずれも11月分)。さらに、米国による中国製品への追加関税第4弾の発動期限である12月15日が迫ることもあり、市場は神経質な展開が予想される。
■国内では10月の鉱工業生産指数が前月比▲4.2%と大幅に低下した。10月は台風の影響があっただけにイレギュラーになった面もあるが、国内景気も増税後の影響が懸念されるだけに楽観は出来ない。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」今期・来期で前週比マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、今期・来期で前週比マイナスであった。 「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は全期間で2種連続の50%割れ。
■企業業績の来年度回復を視野に置けば、株価は一段高を目指す展開が期待できるがが、景気減速懸念などから一旦は小幅な調整局面もあると考える。大企業の事業再編や合従連衡の動きが増加すると考えられるだけに万年割安銘柄の意外高もありそうだ。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,000円~22,800 (前回21,000円~22,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月29日)

今期予想EPS 1281.92 (前週1289.15円)
来期予想EPS 1395.03 (前週1395.88円)
再来期予想EPS 1516.35 (前週1515.30円)
今期予想PER 18.17 (前週17.93倍)
来期予想PER 16.70 (前週16.56倍)
再来期予想PER 15.36 (前週15.25倍)
来期予想PBR 1.10 (前週1.10倍)
来期予想ROE 6.57% 前週 6.62%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.43% (前週 6.50%)

11月29日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



長期金利の上昇からリスクフリーレートを-0.080% (11/29現在)とした場合の妥当レンジ は21,20023,000円と前々週から変わらず。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.4%→51.4%→45.640.445.5
再来期予想ベースのプラス企業比率は、44.151.4%→50.8%→42.445.9
50%割れ続く

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。