8月30日妥当レンジ 19,800円~21,400円
薄商いは買い手不在の商状

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<経済指標発表に注目が強まる週>
■先週は、23日のトランプ大統領による制裁関税の税率引上げ発表を受けて、日本株市場は大幅な下落から始ったものの、26日に中国側が米国に協議再開を呼びかけたことや、トランプ大統領が、中国と貿易協議の再開する方針を示したことから回復基調を辿った。しかしながら、9月1日に米国は中国への制裁関税の第4弾を発動したこと、これに対する中国の報復関税の発動及びWTO(世界貿易機関)へ米国を提訴したことなど、協議再開の可能性が薄らいでいる。
■市場では、米中貿易戦争の早期解消の可能性への期待が潰えたのか、トランプ大統領の発言に対する振幅は小さくなりつつある。今後は、貿易戦争の経済への影響を見定めつつ、株価は下値を模索する動きに向かうと考える。
■31日発表の8月の中国製造業PMI(国家統計局分)は49.5と前月より0.2ポイント低下した。一方、2日発表の財新・マークイット発表分は、50.4と前月から0.5ポイント上昇した。ただし、輸出向け新規受注は大幅に低下しており、この傾向が持続することに対して疑問が示されている。
■今週は、米ISM製造業景況指数(3日)、米国貿易収支(4日)、米ISM非製造業景況指数(5日)、ADP雇用統計(5日)、米雇用統計(6日)と米国主要統計(いずれも8月分)の発表が続く。8日には8月の中国貿易統計の発表が予定されており、市場は経済指標に反応した動きをとるものと考える。

<「コンセンサスDI」は、全期間で11週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、3週連続で全期間でマイナス。「コンセンサスDI」は11週連続50割れであった。
■米中貿易戦争に加えて、香港での民主化を求めるデモの激化、英国のEU離脱を巡るジョンソン首相の強硬策など地政学的リスクも高まりつつあり、市場センチメントが悲観的に傾く可能性も否定しがたい。薄商いは買い手不在の状態を表しており、アップサイドは期待しにくい状況である。引き続き、警戒モードを持ちつつ、資産性の強いビジネスモデルを持つ企業への投資を考えたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,800円~21,400 (前回19,700円~21,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月30日)

今期予想EPS 1377.43 (前週 1378.05円)
来期予想EPS 1420.67 (前週1427.74円)
再来期予想EPS 1530.29 (前週1536.99円)
今期予想PER 15.03 (前週15.03倍)
来期予想PER 14.57 (前週14.51倍)
再来期予想PER 13.53 (前週13.47倍)
来期予想PBR 0.99 (前週0.98倍)
来期予想ROE 6.76% 前週 6.73%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.08% (前週 7.03%)

8月30日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



2万円の攻防が続く 

 



来期予想ベースのプラス企業比率は、 47.640.541.930.239.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、43.337.347.430.138.9
「コンセンサスDI」は低水準を継続。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。