8月2日妥当レンジ 20,300円~22,000円
悪材料は一旦出尽くしながら、快方へのシナリオ不在
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<市場の楽観は吹き飛び、悪シナリオが顕在化>
■FOMC後の記者会見(7/31)において、パウエル議長が長期の利下げ局面入りを否定したこと、トランプ大統領が中国への制裁関税第4弾を9月1日から発動すると発表したこと(1日)、中国人民銀行が人民元取引の基準値を18年12月以来の元安・ドル高水準に設定したのを機に中国当局が元安を容認したとの見方が広がったこと(5日)、米財務相が中国を「為替操作国」に認定(5日)、と連鎖的に悪材料が噴出した。
■この間、金融市場では、ドル安・円高の進行(一時105円台/ドル・5日)、米10年国債利回りの低下(一時1.679%)、株式市場の下落が引き起こされた。ただし、従来が金融緩和期待と米中貿易協議の進展期待という楽観的な状態にあったことを鑑みれば実態を反映した動きとも言えなくは無い。
■ひとまず悪材料は一旦出尽くしと考えられることから、さらなるFRBに対する金融緩和期待が強まることで、リバウンドの動きも生じる可能性が指摘できる。しかしながら、7月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比16.4万人増と雇用の伸びが鈍化傾向にあり、ISM製造業ならびに非製造業PMIも低下傾向にあること、中国への制裁関税第4弾が実際に発動された場合の影響も加味すれば、緩和効果だけで株価を維持することは難しいと推量される。
■日本は、緩和余地が限られていることから米国の利下げがさらなる円高を齎す可能性があること、中国経済減速の影響、韓国との対立の先端化、10月の消費増税、など米国株以上に厳しい展開が予想される。
<「コンセンサスDI」は、全期間で7週連続50割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間でプラスとなった。ソフトバンクG(9984)や半導体関連のプラス寄与が影響した。しかし、「コンセンサスDI」は全期間で7週連続50割れとなった。まだ、通期予想を下方修正する企業は限定的であるものの、下期挽回への期待は薄らいでいると考える。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,300円~22,000円 | (前回20,600円~22,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月2日)
今期予想EPS | 1381.17円 | (前週 1379.89円) |
来期予想EPS | 1435.92円 | (前週1434.90円) |
再来期予想EPS | 1550.97円 | (前週1547.65円) |
今期予想PER | 15.27倍 | (前週15.70倍) |
来期予想PER | 14.69倍 | (前週15.09倍) |
再来期予想PER | 13.60倍 | (前週13.99倍) |
来期予想PBR | 1.01倍 | (前週1.03倍) |
来期予想ROE | 6.84% | (前週 6.85%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.01% | (前週 6.92%) |
8月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジの下方トレンドは強まる見通し。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.8%→38.5%→42.2%→48.1%→47.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.5%→44.9%→47.0%→45.1%→43.3%。
下期に挽回のシナリオも崩れつつある、50割れは暫く継続か。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |