7月5日妥当レンジ 20,900円~22,600円
上値の重い展開続くが、好悪ともに明確な材料不在

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<金融緩和は規定路線?むしろ、中国の経済指標が気になる>
■先週は、豪州準備銀行(中央銀行)の利下げ(7/2)、ラガルドIMF専務理事の次期ECB総裁への指名(7/2)、トランプ政権による空席となっているFRB理事への指名公表(7/2)などから世界的な金融緩和期待が株価を持ち上げたものの、週末(5日)の米雇用統計(6月分)において非農業部門雇用者数が前月比22.4万人増と市場予想(16万人増)を大きく上回り、期待は一旦は萎んだ格好となっている。
■しかし、依然として7/30-31の米FOMCにおける利下げは先物市場では100%と看做されている。「0.5%の利下げ」との見方は大きく後退したが、「0.25%の利下げ」を市場は見込んでいる。パウエルFRB議長の議会証言が、10日(下院)、11日(上院)に予定されており、利下げの可能性を議長の発言から模索する展開が予想される。
■注視すべきトピックスとしては、トルコ中銀のチェティンカヤ総裁の更迭(7/6)、イラン政府が核合意で定められた制限を超えてウラン濃縮度を高めることに着手したこと、および米国の反応(7/7)、4日から日本政府が韓国への半導体材料の輸出制限を厳しくする処置を発動したこと、などが挙げられる。
■中国エコノミスト調査(日本経済新聞・QUICK)において、中国の4-6月の実質GDP成長率は6.2%と1-3月の6.4%からさらに減速するとの見方が示された。12日に発表になる中国貿易統計(6月)は注視が必要。

< IFIS/TIWコンセンサス225」来期ベースは7週連続マイナス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間が前週比マイナスとなった。「コンセンサスDI」も全期間で3週連続50割れとなった。
■今週は好悪ともに明確な材料が不在のために方向感が見え難いが、先週に楽観が強まった反動が予想される。米国は金融緩和というカンフル剤によって持続的成長が見込めれるとしても緩和余地の無い欧州・日本は爪先立ちの不安定な状態。何かの切っ掛けで綻びが広がる危惧が強い。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,900円~22,600 (前回20,500円~22,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月5日)

今期予想EPS 1386.62 (前週 1388.86円)
来期予想EPS 1448.14 (前週 1450.75円)
再来期予想EPS 1560.55 (前週1565.26円)
今期予想PER 15.68 (前週15.32倍)
来期予想PER 15.02 (前週14.67倍)
再来期予想PER 13.94 (前週13.59倍)
来期予想PBR 1.04 (前週 1.01倍)
来期予想ROE 6.94% 前週 6.92%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.01% (前週 7.05%)

7月5日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  


1
日経平均株価は、現状のコンセンサス予想で妥当レンジの中位水準。予想
EPSの下方トレンドに沿って下方にシフトすると考える。



2

来期予想ベースのプラス企業比率は、 38.738.238.938.444.8
再来期予想ベースのプラス企業比率は、46.550.3%→45.543.048.5
やや上向いたが、依然として50%割れ

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。