6月14日妥当レンジ 20,700円~22,300円
FOMC後に上昇あっても、G20を視野に上値重い展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<関税対決は明らかに米国に軍配>
■5月の米国消費者物価指数(12日発表)は、コアで前年比+2.0%と中国に対する制裁関税が広がりを見せる中で、安定的に推移している。これは関税分について輸出元の値下げが行われていることを示すものである。他方、中国の消費者物価指数(5月分:12日発表)は、+2.7%と前月から0.2ポイント上昇。18年5月が1.8%であったことや景気減速を鑑みれば関税の影響が強く出ている。明らかに関税対決では米国が優位にある。
■5月の中国の主要経済統計(14日発表)では、小売売上高こそ連休の影響から前年比+8.6%と上昇したが、鉱工業生産は+5.0%(前月+5.4%)、固定資産投資(1-5月)は5.6%(1-4月は6.1%)と減速感が色濃くなっている。中国政府は高速鉄道や高速道路に関して全額借入金による建設を6月から認めるなど、インフラ投資によって景気を下支えしようとしているが、総債務のGDP比率は3月末で248%と過去最高に達している。中国人民銀行が1ドル=7元の防衛ラインを否定したこと(7日)より、元安が加速する懸念もある。
■今週は米FOMC(18-19日)において、次回の会合(7/30-31)において利下げを示唆する発言が期待されている。それによって、一時的に株価が上昇する局面があるかもしれないが、翌週(28-29日)に20ヵ国・地域(G20)首脳会議を控えており、リスク回避的なスタンスが強まると考える。
■米中の対決路線は変わらず、米中首脳会談が行われても行われなくても(米国の中国に対する)制裁関税 第4弾は発動される可能性が高いと考える。
< IFIS/TIWコンセンサス225」は2週連続全期間マイナスに>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、2週連続で全期間が前週比マイナスとなった。「コンセンサスDI」も今期・来期ベースで50割れが続いている。
■国内経済統計にはまだ顕著な悪化は見られないものの、消費増税が政府の基本方針として明記(11日)されたこともあり、心理的不安が広がることが懸念される。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,700円~22,300円 | (前回20,600円~22,200円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月14日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月14日)
今期予想EPS | 1391.86円 | (前週 1394.78円) |
来期予想EPS | 1460.30円 | (前週 1462.96円) |
再来期予想EPS | 1573.63円 | (前週 1575.72円) |
今期予想PER | 15.17倍 | (前週 14.97倍) |
来期予想PER | 14.46倍 | (前週 14.28倍) |
再来期予想PER | 13.42倍 | (前週 13.25倍) |
来期予想PBR | 1.01倍 | (前週 1.00倍) |
来期予想ROE | 7.01% | (前週 7.03%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.11% | (前週 7.14%) |
6月14日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
予想EPSはじりじり減少が続いている
来期予想ベースのプラス企業比率は、54.5%→40.6%→36.5%→38.7%→38.2%
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.5%→48.1%→46.5%→46.5%→50.3%。
来期ベースの低下トレンドは変わらず。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |