5月17日妥当レンジ 20,900円~22,600円
トランプ砲が炸裂する中で、景気は大丈夫か?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<ファーウェイをターゲットとする禁輸処置を発動>
■15日にトランプ大統領は、中国の華為技術(ファーウェイ)を対処とした米国製ハイテク製品の禁輸処置を発表した。同社が制裁対象のイランと取引をしたとして、輸出管理法に基づく「エンティティ・リスト」に追加。米国製の部品やソフトが、市場価格で25%超含まれれば海外製品も禁輸対象となる。
■また、17日にはカナダ・メキシコに課す鉄鋼・アルミ関税の撤廃で合意したことを発表したが、中国から両国を経由した迂回輸出を防止する監視体制を強化する。
■こうしたトランプ米政権の対中強攻策から米中貿易協議に関して、早期妥結の見通しが大きく後退しており、株式市場の閉塞感を強めている。15日に発表された4月の中国の小売売上高・鉱工業生産、1-4月の固定資産投資はいずれも市場予想を下回り、さらなる減速が懸念されている。
■国内景気も20日に発表された1-3月のGDPは実質年率換算で+2.1%増となったものの、輸入減少に起因するものであり、個人消費、設備投資、輸出はいずれもマイナス寄与となった。消費税率引上げの延期の可能性を睨みながら、これから1ヵ月に発表される経済指標に敏感な動きが続きそうだ。
■今週は、OECD世界経済見通し(21日)、貿易統計(22日)、米製造業受注(24日)もさることながら、25-28日のトランプ大統領の来日による首脳会談に注目が集まるだろう。
< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は移行の影響でプラスだが>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、対象決算期の移行の影響から全期間で前週比プラスであった。対象決算期移行が終わり、次回分から通常に戻る。移行前(3/29時点)の翌期との比較では今期ベース・来期ベースともに落ち込みは限定的であった。ただし、これは米中貿易戦争の新局面を織り込む前の数値であり、下方トレンドが生じる可能性は極めて強い。
■現在の日経平均株価は、妥当レンジ内ではあるが、1Q決算を織り込む7月頃にはレンジの下方シフトが生じる可能性が考えられるだろう。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,900円~22,600円 | (前回20,600円~22,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月17日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月17日)
今期予想EPS | 1423.01円 | (前週 1414.60円) |
来期予想EPS | 1501.31円 | (前週 1486.04円) |
再来期予想EPS | 1593.94円 | (前週 1574.90円) |
今期予想PER | 14.93倍 | (前週 15.09倍) |
来期予想PER | 14.15倍 | (前週 14.36倍) |
再来期予想PER | 13.33倍 | (前週 13.55倍) |
来期予想PBR | 1.01倍 | (前週 1.03倍) |
来期予想ROE | 7.15% | (前週 7.18%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.18% | (前週 7.16%) |
5月17日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
コンセンサス予想は、決算発表前(3/29)と比較して、旧来期1467.33円→新今期1423.01円(97.0%)、旧再来期1511.03円→新来期1501.31円(99.4%)と殆ど下ブレがなかった。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.1%→45.5%→65.6%→66.2%→54.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.5%→40.2%→60.2%→55.2%→54.5%。
今回までは対象決算期の移行の影響が出ているが、来週(5/24分)以降はイレギュラーが無くなる。上下どっちにでるだろうか?
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |