5月10日妥当レンジ 20,600円~22,300円
経済指標悪化から消費税率引上げ再延期観測が広がる?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 
投資のポイント

<市場からは楽観が消えた>
■10日の関税引上げ期限を前に、米中はどこかで妥結するのだろうという楽観が市場には残っていたが、無残に打ち砕かれた。また、米通商代表部(USTR)は10日に中国からの輸入品全てに制裁関税を課す準備を始めると発表した(13日に詳細発表・発動時期は最短でも6月末)。また、中国も報復関税として18年9月に追加関税(5~10%)をかけた6,000億ドル分の米国製品について6月1日より関税率を引き上げる(5~25%)と発表した。6月28~29日の20ヵ国・地域(G20)首脳会議において、トランプ大統領は習近平国家主席と会談する意向を示しており、(結果は分からないが)そこで妥結に至るという希望観測が生じることも考えられる。そうだとしても暫くはリスクオフの動きが続きそうだ。
■日本株については、リスク回避の円買いに加えて、FRBの利下げへの見通しが強まることから円高が加速する可能性がある。輸出関連銘柄には大きな重石になりそうだ。
■内閣府が13日に発表した景気動向指数は一致指数が前月より0.9ポイント低下し99.6となり、景気の基調判断は6年2ヵ月ぶりに「悪化」となった。ただ他方では、国内経済指標の悪化によって、10月に予定されている10%への消費税率引き上げの再延期を求める声が高まると予想される。直近の世論調査(5/10-12:日経・テレビ東京)では安倍内閣の支持率は55%と3月下旬調査の48%から上昇しており、6月28日の国会会期末にむけて、(消費税率引下げを大義名分とした)衆院解散・衆参ダブル選挙という観測が広がるものと予想する。
■こうした観測が広がる起点としては、1-3月国内GDP一次速報(5/20)、月例経済報告(5/21)が一つのポイントと考える。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」来期・再来期はマイナス >
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、対象決算期の翌期への移行が59社あったことから、今期は前週比プラスであったが、来期・再来期はマイナスとなった。コンセンサス予想の下方トレンドはまだ続くと考えられ、日経平均株価の妥当レンジはさらに下方シフトすると予想される。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,600円~22,300 (前回21,300円~23,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月10日)

今期予想EPS 1414.60 (前週 1357.95円)
来期予想EPS 1486.04 (前週 1507.55円)
再来期予想EPS 1557.70 (前週 1562.13円)
今期予想PER 15.09 (前週 16.39倍)
来期予想PER 14.36 (前週 14.76倍)
再来期予想PER 13.70 (前週 14.25倍)
来期予想PBR 1.03 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 7.18% 前週 7.32%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.16% (前週 7.18%)

5月10日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  






図1
新・来期(
20年度)のコンセンサスも下がり始めた。


 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
42.345.145.565.666.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、40.849.540.260.255.2%。
対象決算期の移行により一時的に跳ね上がっている。
こうしたイレギュラーは再来週(5/24分)以降は解消されるであろう。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。