4月12日妥当レンジ 20,600円~22,200円
15日の株価急上昇はフライングか? トレンド変化か?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<楽観シナリオを先取りし過ぎでは?>
■4月中(GW前)は、日経平均3月高値(21,860円)を超える可能性は低いと主張して来たが、15日には22,000円台とボックスを突き抜けた。英国のEU離脱期限が10月末まで延長され、「合意なき離脱」がひとまずは回避されたこと(ただし、迷走状態は変わらない)、15日発表の3月の中国貿易統計で輸出が前年同月比+14.2%と前月(▲20.7%)から大きくプラスに転じたこと、が好感された。
■しかし、中国貿易統計も中身をみると、加工組立関連(ハイテク)の輸出は同+3.0%と小幅な伸びに留まっており、関連材料・部材の輸入を中心に輸入は、同▲7.6%と4ヵ月連続でマイナスであった。
■IMFが世界経済見通しの改定(4/9)で世界全体の成長率を前回(1月)の3.5%から3.3%に引き下げたことや、足元の原油価格の上昇など懸念材料も多い。米国の3月の消費者物価指数(4/10)は前年同月比+1.9%と市場予想を上回る伸びであったが、押し上げたのはエネルギー価格の上昇であった。
■エアバスへの補助金を巡ってトランプ大統領がEU製品への関税を表明し(4/9)、EUの欧州委員会がボーイングへの米政府の補助金に対して報復関税を検討しており、米欧の通商協議も尖端化しつつある。15日から始まった日米物品貿易協定の閣僚協議でも「為替条項」が振りかざされたようだ。米中に関する報道が出てこないのは膠着状態をうかがわせる。こうした状況にもかかわらず、株価が上昇するのは金融緩和の影響でもあるが、世界経済の減速感がまだ強い中では、ややフライング的な買いとも思われる。
■来週から本格化する3月期企業の決算発表によって厳しい新年度の業績見通しが示されるようであれば、ゴールデンウイーク明けに反動で売られることも予想される。短期的には経済指標に一喜一憂する展開が続くと思われる。
< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は実質的にはまだ低下傾向>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、2月決算発表による対象決算期の移行から今期ベースがプラスであるが、基調はまだ若干マイナス。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,600円~22,200円 | (前回20,700円~22,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月12日)
今期予想EPS | 1383.29円 | (前週 1382.74円) |
来期予想EPS | 1464.84円 | (前週 1466.93円) |
再来期予想EPS | 1508.78円 | (前週 1508.01円) |
今期予想PER | 15.81倍 | (前週 15.77倍) |
来期予想PER | 14.93倍 | (前週 14.87倍) |
再来期予想PER | 14.50倍 | (前週 14.46倍) |
来期予想PBR | 1.08倍 | (前週 1.09倍) |
来期予想ROE | 7.23% | (前週 7.32%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.09% | (前週 7.15%) |
4月12日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
15日の上昇は、昨年9月と同じような追加緩和期待なのか?
来期予想ベースのプラス企業比率は、 36.4%→49.3%→44.9%→42.3%→45.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.5%→55.7%→55.1%→40.8%→49.5%。
プラスとマイナスが均衡しつつあるが、3月決算企業の発表待ち。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |