4月5日妥当レンジ 20,700円~22,400円
今週は英国のEU離脱の行方を視野に膠着する展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<楽観の中で、リスクの芽は広がっている>
■先週に発表された米国経済指標において、小売売上高(2月・4/1発表)、ISM非製造業PMI(3月・4/3)は予想を下回って低下したものの、ISM製造業PMI(3月・4/1)、米雇用統計(3月・4/5)は予想を上回っており、まちまちな状態だった。雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比19.6万人増、失業率3.8%、平均時給前年比+3.2%と好調であったが、製造業の雇用者数が減少に転じ、海外の景気減速や貿易戦争の影響の兆しが見て取れた。
■英国のEU離脱問題は、メイ首相がトゥスク大統領に書簡を送り、6月30日への離脱期限の再延期を求めている。10日の緊急欧州首脳会議で議論されるが予断を許さない状況である。英国内は、野党・労働党に対する譲歩は、政権内での合意が得られず益々混迷を深めている。ここに来て(メイ首相案の是非を問う)国民投票の実施も検討に浮上してきた。
■モラー特別検察官の報告書で実質的に“シロ”となったトランプ大統領が攻勢を強めている。FRB理事会の2つの空席に対して自らに近い元実業家と経済評論家を指名する意向を表明した(4日)。世界銀行は大統領選挙時にはトランプ氏の経済顧問を務めたマルパス米財務次官を正式に選出した(5日)。メキシコからの不法移民対策を強化するためにニールセン国土安全保障長官を7日に事実上罷免した。
■米中貿易協議は、トランプ氏は、「合意を急ぐのではなく、真のディールにすることが重要だ」と主張し、4月中の米中首脳会談の実現は遠のいた様相である。
■今週は、英国のEU離脱協議期限(4月12日)に向けて緊張が高まると同時に、3月の中国貿易統計(12日)発表に注目が集まる。買い手不在の上値の重い展開が予想される。
<「コンセンサスDI」は再び大きく低下>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、今期ベースがプラス、来期・再来期がマイナスだった。今期のプラスもセブン&アイの対象決算期の移行の影響によるもの。「コンセンサスDI」(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は来期・再来期が大きく低下。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,700円~22,400円 | (前回20,100円~21,800円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月5日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月5日)
今期予想EPS | 1382.74円 | (前週 1381.91円) |
来期予想EPS | 1466.93円 | (前週 1467.33円) |
再来期予想EPS | 1508.01円 | (前週 1511.03円) |
今期予想PER | 15.77倍 | (前週 15.35倍) |
来期予想PER | 14.87倍 | (前週 14.45倍) |
再来期予想PER | 14.46倍 | (前週 14.03倍) |
来期予想PBR | 1.09倍 | (前週 1.07倍) |
来期予想ROE | 7.32% | (前週 7.39%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.15% | (前週 7.33%) |
4月5日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
足もとの企業業績悪化と世界経済減速に注目するか、20年度の企業業績回復を視野に置くかで揺れる展開がまだまだ続きそう。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 32.0%→36.4%→49.3%→44.9%→42.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、37.2%→45.5%→55.7%→55.1%→40.8%。
再び50を大きく下回る。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |