3月22日妥当レンジ 20,600円~22,400円
日本株は(少なくとも)GW明けまでは出直り期待できず

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 
投資のポイント

<12年振りの逆イールド発生>
■19-20日に米FOMCが開かれた。ドットチャート(FOMC参加者による金利予想)によって、2019年中の利上げが見送られたことが確認された。加えて、資産縮小を9月末で停止する方針が示された。
■FRBが予想以上にハト派であったことから、その結果として、世界経済の減速懸念が意識され、22日発表のユーロ圏製造業PMIの低下に市場は大きく反応した。また、米債券市場で10年債利回りが、短期債(3カ月物財務省短期証券)を下回る逆イールドが12年ぶりに発生したことなどから週末(22日)のNY株式市場は大幅な下落となり、週明け25日の東京市場でも日経平均株価が一時700円を超す下落となった。
■米長期金利が低下したことによって、新興国からの資金流出の懸念は後退するものの、好調を続けてきた米国経済の減速懸念が強まっている。一方で、利下げなどFRBのさらなる緩和期待が生じることによって、一気にマーケットが崩れてゆく展開にはならないように思われる。今後は、米国をはじめとした経済指標の他、新興国通貨、原油価格などにも注視する必要があるだろう。
■英国のEU離脱に関しては、離脱合意案を英議会が可決できない場合には、4月12日を離脱延期の期限とすることが21日のEU首脳会議で決定した。合意なき離脱の可能性も多分にあると同時に、英国がEUに留まる可能性も示唆される。
■日本株については、本決算を踏まえて19年度の業績見通しを織り込む必要があること、4月以降に日米物品貿易協定(TAG)の交渉が始まると見られること、米金利低下による円高懸念、さらにゴールデンウィーク(GW)10連休という空白期間が控えている。3月4日につけた日経平均株価21,840円が目先の天井であり、下押し圧力の強い展開が少なくともGW明けまでは続くと考える。
■今週は、28-29日に米中閣僚級貿易協議が予定されている。米中については構造問題協議や追加関税の取り扱いなどに隔たりが大きいと伝えられており、まだまだ警戒を解く段階にはなさそうだ。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,600円~22,400 (前回20,600円~22,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月22日)

今期予想EPS 1377.61 (前週 1373.56円)
来期予想EPS 1462.52 (前週 1464.68円)
再来期予想EPS 1506.80 (前週 1508.67円)
今期予想PER 15.70 (前週 15.62倍)
来期予想PER 14.79 (前週 14.65倍)
再来期予想PER 14.35 (前週 14.22倍)
来期予想PBR 1.09 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 7.36% 前週 7.37%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.23% (前週 7.22%)

3月22日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 






図1
月曜日の下落を考慮すれば、妥当レンジは下方シフトか。

 





図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 
39.338.232.036.449.3
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.141.237.245.555.7%。
12週ぶりに再来期ベースが50%超。

 [注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]




出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。