円高と共存可能な日本株 ①

当社サイトはこちら→三井住友トラスト・アセットマネジメント 投資INSIDE-OUT

4月初めにトランプ米大統領が相互関税を発表した後、世界的な景気後退が意識されて金融市場は大きな混乱に見舞われました。トランプ政権が上乗せ分の関税を発動直後に一時停止したことや、貿易交渉への進展期待から、世界の株式市場は4月末には関税発表前の水準へと回復しました。

一方で為替については、3月末と比べて円高・米ドル安の水準となっています。仮に今後の政府間交渉によって相互関税の影響が軽微に留まったとしても、円高が日本株回復の重荷になると予想する市場関係者もいます。日本株が過去3年間の円安基調と歩調を合わせて上昇してきたこともあり、円高は日本株にとってマイナスだと考えられがちです。今後3回に分けて、いま一度、為替と日本株の関係を見直してみたいと思います。

◆歴史的にみれば、過剰な円安水準

第1回目で確認したいのは、現在の為替相場が過剰な円安水準にあるということです。今世紀に入って以降、米ドル/円は概ね1ドル=100円~120円の範囲で推移してきました。一方、2022年以降は1ドル=140円台となるなど、過去のレンジから大きく円安方向に逸脱した水準で推移しています。また、為替には購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)という物差しがあります。購買力平価*(ここでは相対的購買力平価)とは、2国間のインフレ率の格差から算出される為替レートです。実際の為替レートが購買力平価に連動するわけではありませんが、物価を基準とした際に為替が割安なのか割高なのかを観察することができます。過去数十年において日本円は購買力平価と比べて割高に取引されていましたが、2022年以降は割安な水準まで売られています。

為替は日本経済に様々な影響を与えますが、ここ数年の過剰な円安は輸入物価の上昇をもたらし、個人消費の本格回復を遅らせています。日本政府もこの状況を看過できず、2022年と2024年に米ドル売り・円買い介入を行いました。少し長めの視点から見れば、ここ数カ月の円高傾向は過剰な円安水準の是正という見方もできるでしょう。

*米ドル/円の購買力平価=実勢為替レート×(日本の物価指数/米国の物価指数)

『円高=株安』という従来の考え方を見直す時期なのかもしれません。

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社
三井住友トラスト・アセットマネジメントの金融情報調査室が、投資にまつわるコラムをお届けします。
【ご留意事項】
  • 当資料は三井住友トラスト・アセットマネジメントが投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、金融商品取引法に基づく開示書類ではありません
  • ご購入のお申込みの際は最新の投資信託説明書(交付目論見書)の内容を必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
  • 投資信託は値動きのある有価証券等(外貨建資産には為替変動リスクを伴います。)に投資しますので基準価額は変動します。したがって、投資元本や利回りが保証されるものではありません。ファンドの運用による損益は全て投資者の皆様に帰属します。
  • 投資信託は預貯金や保険契約とは異なり預金保険機構および保険契約者保護機構等の保護の対象ではありません。また、証券会社以外でご購入いただいた場合は、投資者保護基金の保護の対象ではありません。
  • 当資料は信頼できると判断した各種情報等に基づき作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また、今後予告なく変更される場合があります。
  • 当資料中の図表、数値、その他データについては、過去のデータに基づき作成したものであり、将来の成果を示唆あるいは保証するものではありません。
  • 当資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれの指数の開発元もしくは公表元に帰属します。