「原油価格」、需給では上昇しにくい(グローバル)

<今日のキーワード>「原油価格」、需給では上昇しにくい(グローバル)

原油価格の動向に注目が集まっています。足元の原油価格は40ドルを割り込み、2014年の高値から66%下落しています。原油価格の下落は日本など石油を輸入する国にとっては恩恵をもたらしますが、石油企業や産油国の経済には大きな痛手となるばかりでなく、最近では世界的な金融不安の引き金になるとの懸念もあり、株式市場の注目も原油価格の動向に集まっています。

【ポイント1】原油価格の低迷長引く

米国の原油在庫は過去最高水準に
■原油価格低迷が長期化しています。4日の原油価格(WTI)は、1バレルあたり36.8ドルと前日比0.8%下落、リーマン・ショック後の安値近辺での推移となっています。

■サウジアラビアとイランの断交が報じられ、地政学リスクの高まりから、一時上昇する局面もありましたが、原油の在庫過剰が長引くとの見方が優勢となりました。現状の需給実態を表しているような相場でした。

【ポイント2】需給は当面緩慢なまま

イランの増産が市況の重荷
■原油安の最大の要因は、生産過剰と需要の伸び悩みです。中でもシェールオイルの開発が進行した米国の増産が顕著です。リグ(石油掘削施設)稼働数は、直近のピークから4割程度減少していますが、既存油井の増産から、原油生産は殆ど減少していない模様です。

■この結果、米国の原油在庫は平年に比べ2割以上積み上がっています。2015年12月のOPEC総会で減産合意がなされなかったうえ、今後はイラン産原油の輸出再開が予想されます。米国の輸出解禁もマイナスに作用しそうです。原油需給は今後6カ月程度は緩慢なまま推移しそうです。

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【今後の展開】下値リスクは限定的だが、中国の景気動向には注意

■石油製品の価格下落による需要喚起、新興国での需要増加など、今後の需要面でプラス要素はありますが、世界第二位の消費国である中国の景気動向が重要な要因となりそうです。財政赤字に陥ったサウジアラビアや他の産油国の石油政策、地政学リスクも注目されます。

■1985年、1997年、2000年、2008年の過去4回の原油価格の大きな下落局面と比較して、今回の局面は下落幅、期間とも平均を上回っています。また産油コストの高いシェールオイルの損益分岐点を下回っていることなどから、ここからの下値は限定的と思われます。

(2016年1月6日)

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