「賃金上昇率」は加速の見通し(米国)

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米国の非農業部門雇用者数は月平均20万人を超えるペースで増加し、失業率は今年6月に5.3%まで低下しました。完全雇用に到達したのではないかとの見方も一部にあるようですが、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、労働市場には依然としてスラック(需給の緩み)が残っているとの見方を変えていません。その理由のひとつが、なかなか加速しない「賃金上昇率」です。

【ポイント1】 低位にとどまる「賃金上昇率」

イエレン議長は賃金の「下方硬直性」が原因のひとつと考えている
■米国の「賃金増加率」は2010年11月の前年比1.7%増を底に上昇に転じました。しかし、そのペースは緩慢なものにとどまっています。直近6月の「賃金上昇率」も同2.0%増でした。

■イエレンFRB議長は、その原因のひとつとして、賃金の「下方硬直性」を挙げています。つまり不況期に企業が賃金を削減しようとしても、労働者は生活を守るため、賃下げに対して強く抵抗します。景気が悪化しても企業は望む通りの賃金削減ができないわけですが、その分、今度は景気が良くなっても、しばらく賃金上昇の抑制を続けるというのです。

【ポイント2】 賃金は労働需給に遅れて動く

年後半に賃金上昇は加速する見通し
■このことは労働需給の改善と「賃金上昇率」との間に、「時間のずれ(タイムラグ)」があることを示しています。実際、労働需給を測る尺度のひとつ自発的離職者比率(いわゆる自己都合による退職者の失業者に占める比率)に対して、「賃金上昇率」は10ヵ月ほど遅れて動いているのが見て取れます。

■自発的離職者比率は2010年9月の5.5%を直近の底として10%前後まで改善しました。同比率との関係から判断すると、今年後半の「賃金上昇率」は前年比3%近くに到達する公算が大きいと考えられます。

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【今後の展開】 賃金上昇により下期の経済成長は加速、FRBは年内利上げへ

■「賃金上昇率」が加速すれば、生産→雇用→所得→消費→生産という好循環が一段と強まる見込みです。年後半は景気拡大のペースが速まると予想されます。

■FRBは年後半に利上げを開始する予定です。今後、「賃金上昇率」の加速が見込まれることを考慮に入れると、やはり9月の可能性が高いのではないかと考えられます。

(2015年7月22日)

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