市場の根底にある景気減速懸念
市川レポート(No.597)市場の根底にある景気減速懸念
- 主要株価指数の軟調な動きが続くなか、米国でのGAFA株の調整は景気変調の兆しとの見方も。
- 市場の根底には景気減速懸念がある可能性、ただ主要国・地域は景気後退には陥らないとみる。
- 一部新興国通貨は対ドルで上昇、東証リートも上昇、まだ全市場が景気に悲観的な訳ではない。
主要株価指数の軟調な動きが続くなか、米国でのGAFA株の調整は景気変調の兆しとの見方も
10月以降、主要国の株価指数は軟調な動きが続いています。9月28日を基準として、11月20日までの騰落率を確認すると、日経平均株価は-10.5%、ダウ工業株30種平均は-7.5%、ドイツ株式指数(DAX)は-9.6%となっています。特に米国では、「GAFA」と呼ばれるIT大手4社、すなわちグーグル(親会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの株価調整が顕著にみられます(図表1)。
これまで株式市場を牽引してきたGAFAでしたが、その成長性に陰りが出始めたとの声も聞かれます。また、アップルについては、このところ新型iPhoneの売れ行き不振を示唆する報道が続きました。そのため、一部投資家の間では、スマートフォンの需要減少は消費の減退が背景にあり、景気変調の兆しが現れているのではないか、という懸念もみられます。
市場の根底には景気減速懸念がある可能性、ただ主要国・地域は景気後退には陥らないとみる
また、米国経済と中国経済の先行きに対する慎重な見方は多く、米国については財政刺激効果の剥落や景気循環のピークアウト、中国については米制裁関税の国内経済への影響が、それぞれ不安材料とみられます。足元では、日米独の10年国債利回りが低下傾向にあり、また、原油価格も大きく下落していることから、市場の根底には、やはり世界的な景気減速への強い懸念があるように思われます。
主要国の経済成長に関する弊社の見通しは図表2の通りです。米国の経済成長率は、2019年に緩やかな減速を見込んでいますが、年間では前年比+2.5%程度の着地を予想しています。中国の経済成長率は、当局が景気対策を積極化しつつも、小幅な成長鈍化を容認すると思われ、2019年は同+6.3%を予想しています。つまり、日本やユーロ圏も含めた各国・地域の成長ペースは2019年に鈍化するものの、景気後退までには至らないと考えています。
一部新興国通貨は対ドルで上昇、東証リートも上昇、まだ全市場が景気に悲観的な訳ではない
弊社の経済見通しに基づけば、世界景気に対する市場の減速懸念は「行き過ぎ」ということになります。しかしながら、例えば米中貿易摩擦問題では、解決に向けた動きが見えておらず、世界経済の先行きに不透明感が残るのは確かです。そのため、早々に株式などリスク資産に持ち高整理の動きが出ること自体、市場の健全な姿といえます。そして、不透明感を払拭する材料が出た途端、「下げは行き過ぎ」、「割安」などの理由から、急速に買い戻しが入ることも、また市場の見慣れた風景です。
なお、米長期金利が低下し、ドル高が一服したことで、一部の新興国通貨が上昇しています。前述の9月28日から11月20日までの期間、アルゼンチンペソ、トルコリラ、ブラジルレアル、インドルピーなどは対米ドルで上昇しました。長期金利の低下はリート市場にも追い風となり、東証リート指数は同期間で1.0%上昇しています。これらの動きをみる限り、まだ市場全体が世界景気の減速を懸念しているという訳ではないように思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(2018年11月21日)
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