「株高を伴うドル安」と「株安を伴う円高」

市川レポート(No.422)「株高を伴うドル安」と「株安を伴う円高」

  • 現在の市場は「株高を伴うドル安」の状況、ドル全面安のなか、ダウ平均などは最高値を更新中。
  • ドル安が、米景気後退懸念を背景とするものに転じた場合、「株安を伴う円高」となるため要注意。
  • 「株高を伴うドル安」が続くか「株安を伴う円高」に転じるかは、今後発表される米経済指標次第。

 

現在の市場は「株高を伴うドル安」の状況、ドル全面安のなか、ダウ平均などは最高値を更新中

ドル円相場が、ドル安・円高に振れた場合、それが「ドル安」要因によるものか、「円高」要因によるものかによって、株式市場に与える影響は異なります。例えば、米利上げ先送り期待を背景とするドル安なら、米株には好材料です。この場合、為替がドル安・円高に振れても、日本株は底堅い動きが見込まれます。つまり、これは「株高を伴うドル安」ということができます。

現在の市場は、「株高を伴うドル安」の状況にあると思われます。実際に足元では、緩やかなペースでの米利上げが見込まれるなか、ダウ工業株30種平均など米主要株価指数が過去最高値を更新する一方、為替市場ではドルがほぼ全面安となっています(図表1)。主要通貨は強い順に、ユーロ>ポンド>円>ドルと並んでいますので、ドル円はドル安・円高、ユーロ円やポンド円は、ユーロ高・円安、ポンド高・円安になります。

 

ドル安が、米景気後退懸念を背景とするものに転じた場合、「株安を伴う円高」となるため要注意

なお、ドル安が、米景気後退懸念を背景とするものに変わった時には警戒が必要です。この場合、米株が下落し、日本株にも売りが波及する恐れがあります。また為替市場では、リスクオフ(回避)の動きから、ドル、ユーロ、ポンドなどの主要通貨に対し、円がほぼ全面高となる展開が予想されます。したがって、これは「株安を伴う円高」ということができます。

したがって、「株高を伴うドル安」の状況にある限り、ドル円が110円近辺まで調整したとしても、日本株に対する過度な悲観は必要ないと考えます。ただし、それでもドル安・円高は、ある程度日本株の重しになると思われます。その際、日本株の下支えとなるのは、米利上げ先送り期待を背景とする米株の上昇や、堅調な内容が予想される日本企業の2017年4-6月期決算と考えます。

 

「株高を伴うドル安」が続くか「株安を伴う円高」に転じるかは、今後発表される米経済指標次第

米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月26日に公表した声明で、バランスシート縮小開始の前倒しを示唆した一方、物価の見通しを小幅に下方修正しました(図表2)。市場が反応したのは、ほぼ織り込み済みであったバランスシート縮小の早期開始示唆ではなく、物価見通しの変更でした。米金融当局は利上げに慎重と解釈され、今回のFOMCは、「株高を伴うドル安」の動きを強める結果となりました。

この先、米国で経済指標の改善と物価の持ち直しがゆっくりと進めば、極めて緩やかなペースでの利上げが可能となり、「株高を伴うドル安」が持続することで、日米株式市場には好ましい展開が見込まれます。仮に、経済指標の下振れと物価の鈍化が長期化すれば、「株高を伴うドル安」が「株安を伴う円高」に転じる恐れがありますが、それは今後発表される米経済指標の内容次第となります。

 

 

170728図表1170728図表2

 

 

(2017年7月28日)

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