オバマケア見直し迷走が相場に与える影響

市川レポート(No.419)オバマケア見直し迷走が相場に与える影響

  • 上院共和党は、オバマケア代替法案の採決を断念し、廃止法案を先に成立させる戦略に転じた。
  • ただ廃止法案にも反対の声、オバマケア見直しは続けてもあきらめても、景気対策に影響する恐れ。
  • 市場は、見直し迷走の景気対策への影響を織り込み済み、むしろ今後の焦点は米国経済指標。

 

上院共和党は、オバマケア代替法案の採決を断念し、廃止法案を先に成立させる戦略に転じた

トランプ米政権の優先課題である医療保険制度改革法(Affordable Care Act、通称「オバマケア」)の見直しを巡り、先行きが一段と不透明になっています。米国では、共和党が上院の定数100議席のうち52議席を占めていますが、4名の議員がオバマケア代替法案に反対していました(図表1)。そのため、上院共和党のマコネル院内総務は7月17日、上院におけるオバマケア代替法案の採決を断念しました。

しかしながら翌18日、マコネル院内総務はオバマケア代替法案ではなく、廃止法案を来週早々に採決すると表明しました。つまり、執行まで2年の猶予を置くオバマケア廃止法案を先に成立させ、その間の2年で代替法案を成立させるという戦略です。ただし、いったん廃止となれば、代替制度が導入されない限り、2年後に多数の無保険者を生むことになります。そのため、すでに3名の上院共和党議員が、廃止法案に反対しています。

 

ただ廃止法案にも反対の声、オバマケア見直しは続けてもあきらめても、景気対策に影響する恐れ

そのため、廃止法案も採決断念となる恐れがありますが、それでもトランプ米大統領がオバマケアの見直しを重視する以上、今後もオバマケア廃止と代替法案の議論は続く見通しです。そして、この議論が長引けば長引くほど、18年度予算の成立はさらに先送りとなりますので、減税などを含む税制改革や、インフラ投資などの景気対策は、実現が遅れることになります。

トランプ米大統領がオバマケアの見直しをあきらめれば、景気対策への期待は高まります。ただ、18年度の予算教書(5月23日発表)や、米下院共和党の予算決議案(7月18日発表)は、ともにオバマケアの見直しによる今後10年間の歳出削減効果(前者は約2,500億ドル、後者は約2,041億ドル)を見込んでいます。そのため、オバマケア存続となれば、想定される歳出削減効果が失われるため、減税の規模にも影響が生じます。

 

市場は、見直し迷走の景気対策への影響を織り込み済み、むしろ今後の焦点は米国経済指標

以上より、オバマケアの見直しを続けた場合、景気対策が遅れる恐れはあるものの、実際に見直しとなれば、歳出削減効果が見込まれ、景気対策の規模にはプラスとなります。一方、見直しをあきらめた場合、景気対策は早まる可能性が高まりますが、歳出削減効果が失われ、景気対策の規模にはマイナスとなります。このような展開がみえているため、オバマケアの見直しが迷走しても、市場は比較的冷静に、その行方を見守ることができると思われます(図表2)。

また、市場は景気対策について、実現時期の後ずれと現実的な規模への着地を、すでにある程度織り込んでいると推測されます。そのため、今後の焦点は、改めて米国の経済指標となります。米経済の底堅い成長を示すものが続けば、市場が早期の景気対策を求めることはなく、オバマケア見直しが迷走しても、市場の悪材料にはなりにくいと考えます。一方、米経済の失速を示すものが続けば、市場は早期の景気対策を求めるため、見直し迷走は悪材料と意識される恐れがあります。

 

170720図表1170720図表2

 

(2017年7月20日)

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