今週の重要イベントを整理する
市川レポート(No.365)今週の重要イベントを整理する
- 英国は3月14日にも離脱通知、オランダ下院選で極右政権誕生は困難、市場の動揺は回避へ。
- FOMCで緩やかな利上げペース確認なら市場安定、予算概要に対する市場の反応は限定的か。
- その他イベントも波乱なく終了とみるが、FOMCが過度にタカ派的となれば、最大のリスクシナリオに。
英国は3月14日にも離脱通知、オランダ下院選で極右政権誕生は困難、市場の動揺は回避へ
今週は、ドル円相場と日本株を展望する上で、重要なイベントが目白押しとなっています。そこで以下、主なイベントについて注目ポイントを整理します(図表1)。まず欧州について、英国では3月13日に欧州連合(EU)離脱法案の再審議が行われ、オランダでは3月15日に下院選挙が行われます。ここでの市場の関心は、英国の離脱通知時期とオランダの反EU政党の動向です。
英議会で下院が上院の修正案(EU市民の権利保障など)を否決し、上院がこれを追認すれば、英国は3月14日にもEUに離脱を通知する見通しです。またオランダ下院選挙では、極右政党の自由党が第1党となっても連立が必要となり、現時点で他の主要政党が連立を否定していることから自由党政権は誕生しないと思われます。したがってこれらのイベントで市場が動揺する恐れは小さいとみています。
FOMCで緩やかな利上げペース確認なら市場安定、予算概要に対する市場の反応は限定的か
次に米国では、3月14日、15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。昨年12月時点で、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布(ドットチャート)が示唆する2017年の利上げ回数は3回、政策金利の長期見通しは3.0%でした。今回はこれら数値の変化の有無から利上げペースを探ることになりますが、緩やかな利上げペースが確認できれば、市場の安定につながりやすいと思われます。
また米行政管理予算局(OMB)によれば、トランプ政権は3月16日に予算概要を米議会に提出する予定です。ただ今回は予算の一部である「裁量的歳出」のみで、税制を含む本格的な予算の提出は5月になるとのことです。そのため市場の反応は限定的と思われます。またムニューシン米財務長官は3月17日からドイツで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に就任後初めて参加します。米国の為替に関する見解がどの程度示されるかが注目されます。
その他イベントも波乱なく終了とみるが、FOMCが過度にタカ派的となれば、最大のリスクシナリオに
この他、日本では3月15日、16日に日銀金融政策決定会合が開催され、ここでは政策据え置きを予想します。3月16日の黒田総裁の記者会見では、今月より開始した国債購入実施日の公表について説明がなされる可能性はありますが、将来的な政策変更に関する手掛かりまでは得られないと思われます。また足元軟調な原油相場については、3月14日公表の2月の石油輸出国機構(OPEC)月報で、どの程度減産が進んでいるかが焦点です。
各イベントは大きな波乱なく終了すると予想しますが、最大のリスクシナリオは、FOMCで過度にタカ派的な姿勢が示されることです。この場合、米長期金利と米ドルが大幅に上昇し、米ハイイールド債券、米リート、原油、資源国および新興国の資産などが急落する恐れがあります。市場でリスクオフ(回避)の度合いが強まれば、日本円は米ドル以上に上昇し、日本株に下落圧力が生じます。今回この事態は回避されると思いますが、FOMCは特に注意が必要と考えます。
(2017年3月13日)
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