リスク顕在化に備え始めた金融市場
市川レポート(No.318)リスク顕在化に備え始めた金融市場
- FOMCは12月の利上げを控えめに示唆する内容だったが、リスクオフの動きを緩和するには至らず。
- ドル円は102円台後半に、日経平均は16,500円~16,600円台に、それぞれ支持線が重なる。
- 市場の不安を払拭するには、「クリントン候補の圧勝」と「私用メール問題の早期幕引き」が必要に。
FOMCは12月の利上げを控えめに示唆する内容だったが、リスクオフの動きを緩和するには至らず
11月8日の米大統領選挙を前に、金融市場では一段とリスクオフ(回避)の動きが強まっています。ダウ工業株30種平均は節目の18,000ドルを割り込み、11月3日まで6営業日連続安となっています。同日、WTI原油先物価格は一時1バレル=44ドル37セントまで下げ、ドル円も一時1ドル=102円55銭水準までドル安・円高が進行しました。そして11月4日の日経平均株価は、17,000円を割り込み、16,905円36銭で取引を終えました。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、11月1日、2日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り金融政策の据え置きを決定しました。FOMC声明では、物価の評価が幾分引き上げられ、利上げについては「幾らかの更なる証拠を待つ」とし、「幾らか(some)」の文言が追加されました。つまり今回のFOMCは、12月利上げを控えめに示唆する内容となりましたが、リスクオフの動きを緩和するには至りませんでした。
ドル円は102円台後半に、日経平均は16,500円~16,600円台に、それぞれ支持線が重なる
ここでドル円と日経平均株価のごく短期的な下値目途を確認しておきます。ドル円は90日移動平均線(本日102円76銭水準)と13週移動平均線(今週102円57銭水準)が102円台後半に位置していますので、このレベルではいったんのサポートが見込まれます。102円を割り込んでしまった場合、日足一目均衡表の先行スパン1(本日101円82銭水準)が次の下値目途として意識されやすいと考えます。
次に日経平均株価は、16,500円~16,600円台にサポートラインが集中していますので、このレベルでは相応の下値支持が見込まれます。具体的なサポートラインは、日足一目均衡表の先行スパン1(本日16,637円70銭水準)と先行スパン2(同16,538円70銭水準)(図表1)、90日移動平均線(同16,578円89銭水準)と200日移動平均線(同16,587円03銭水準)(図表2)、そして26週移動平均線(今週16,508円11銭)です。
市場の不安を払拭するには、「クリントン候補の圧勝」と「私用メール問題の早期幕引き」が必要に
10月28日以降再燃したクリントン候補の私用メール問題ですが、目先新たな情報が追加されない限り、材料としてはいったん相場に織り込まれたと思われます。なお11月4日は10月の米雇用統計が発表されます。非農業部門雇用者数は市場予想で前月比17万3千人増(前回は同15万6千人増)、失業率は4.9%(前回は5.0%)となっていますが、予想に近い数字となれば、金融市場への影響は限定的と考えます。
円相場や日本株は、私用メール問題をきっかけにトランプ大統領誕生というリスク顕在化に備え始めており、おそらく慎重なムードのまま、11月8日の大統領選挙を迎えることになると思われます。市場の不安を払拭するには、「クリントン候補の圧勝」と「私用メール問題の早期幕引き」が必要になりつつあり、「僅差での勝利」や「問題の長期化」は、選挙後も市場にいくらかの不安を残す恐れがあります。
(2016年11月4日)
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