日米ともに金融政策をRethink(再考)~米国編

2016/08/22

市川レポート(No.290)日米ともに金融政策をRethink(再考)~米国編

  • バーナンキ前FRB議長は潜在成長率の低下を、ウィリアムズ総裁は自然利子率の低下を指摘。
  • ブラード総裁は新しいアプローチの下、FF金利は向こう2年半で0.63%が適切との見方を示す。
  • イエレンFRB議長は8月26日、このような政策Rethink(再考)にどのような見解を示すか注目。

バーナンキ前FRB議長は潜在成長率の低下を、ウィリアムズ総裁は自然利子率の低下を指摘

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ前議長は8月8日、自身のブログで、実質GDP成長率、失業率、政策金利に関するFOMCメンバーの長期水準見通しは、ここ数年下方修正が続いていると指摘しました(図表1)。そしてこれらは、米国の潜在成長率、自然失業率、フェデラルファンド(FF)金利の最終到達水準、それぞれの低下を示唆し、米連邦公開市場委員会(FOMC)のスタンスをハト派的にしてきたと述べました。

そしてサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は8月15日、自身の論文で、自然利子率(インフレを加速も減速もさせない景気に中立的な均衡実質利子率)が低い環境での新しい金融政策を考えるべきと主張しました。論文では具体的な方法として、物価目標の引き上げや名目GDPターゲットの採用、自然利子率押し上げのための財政政策が挙げられました。

ブラード総裁は新しいアプローチの下、FF金利は向こう2年半で0.63%が適切との見方を示す

さらにセントルイス地区連銀のブラード総裁は8月17日、金融政策正常化の新しいアプローチについて講演を行いました。同総裁は、経済は長期安定水準に収束していくので、その収束過程で政策金利を引き上げていくという旧来のアプローチはすでに機能していないとし、むしろ経済は1つの状況が長く続くため、それに応じた金融政策が求められると述べています。

そして足元の経済は、景気後退確率、実質金利、生産性がいずれも低い状態にあるという判断の下、FF金利は向こう2年半で0.63%の水準を維持することが適切との見方が示されました。バーナンキ前FRB議長、ウィリアムズ総裁、ブラード総裁の見解は、いずれも現行の金融政策について「Rethink(再考)」を示唆、あるいは催促する内容となっていますが、この時期にそろって示されたことには意味があります。

イエレンFRB議長は8月26日、このような政策Rethink(再考)にどのような見解を示すか注目

ワイオミング州ジャクソンホールでは、8月25日から27日まで、カンザスシティ地区連銀主催の経済シンポジウムが開催されます。今年のテーマは「Designing Resilient Monetary Policy Frameworks for the Future(将来に向けたより堅固な金融政策の設計)」ですので、まさにバーナンキ前FRB議長らが言及した内容について議論が行われます。

イエレンFRB議長は8月26日に講演を行う予定ですが、議長自身が米国の潜在成長率、自然失業率、自然利子率に対し、どのような認識を示すかが注目されます。いずれも低下していると明言されれば、市場は米利上げ時期の先送りを急速に織り込む可能性があるため、ある程度バランスのとれた言い回しが予想されます。なお米金融政策については、9月と11月は見送り、12月に利上げを引き続き予想していますが、金融政策の「Rethink(再考)」がFOMC内で広がった場合、9月に公表されるFOMCメンバーが適切と考える政策金利水準見通し(図表2)は、全般に下方修正される可能性もあります。

160822図表1160822図表2

 

 (2016年8月22日)

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