マイナス金利の適用額に関する考察

2016/02/23

市川レポート(No.214)マイナス金利の適用額に関する考察

  • マイナス金利適用額は約23.2兆円だが、金融機関全体でみれば利息は依然として受取超。
  • ゆうちょ銀行など「その他の準備預金制度適用先」が、マイナス金利適用額の過半数を占める。
  • 数字はあくまで試算だが、業態別にみるとそれぞれが抱える課題などがみえ、有益な材料である。

マイナス金利適用額は約23.2兆円だが、金融機関全体でみれば利息は依然として受取超

日銀は2月16日、1月の準備預金積み期間(2016年1月16日から2月15日)における当座預金実績に、マイナス金利を含む新たな付利制度を適用した場合の金額を業態別に試算し、公表しました。当座預金の平残は全体で約253.4兆円となり、内訳は+0.1%の適用額が約206.4兆円(全体の81.5%)、ゼロ%が約23.8兆円(同9.4%)、-0.1%が約23.2兆円(同9.2%)でした(図表1)。

1月の所要準備額の平残は約8.8兆円でしたので、従来の付利制度(超過準備は+0.1%、所要準備はゼロ%)で、1年間当座預金や所要準備の水準が変わらなければ、(253.4兆円-8.8兆円)×0.1%=約2,446億円が年間の付利金額となります。一方、新たな制度では、206.4兆円×0.1%+23.8兆円×0%+23.2兆円×(-0.1%)=約1,832億円が年間の付利金額となるため、金融機関の受取利息は差額の約614億円分減少することになります。

ゆうちょ銀行など「その他の準備預金制度適用先」が、マイナス金利適用額の過半数を占める

これだけをみるとマイナス金利が導入されても、金融機関全体で利息は依然受取超であり、また従来制度と比較した場合の減少額もそれほど巨額ではないため、金融機関の業績懸念はやや行き過ぎのように思われます。ただ日銀はマイナス金利導入後も、マネタリーベースが年間で約80兆円増加するよう市場調節を行っており、金融機関が日銀当座預金の増加分を放置すれば、その分マイナス金利の適用額も増加していくことになります。

またマイナス金利の適用額は業態によって大きく異なります。最も大きい額は、ゆうちょ銀行や大手の信用金庫などを含む「その他の準備預金制度適用先」の約12.3兆円です。次いで「外国銀行」の約4.1兆円、「信託銀行」の約2.3兆円、証券会社や短資会社などを含む「準備預金制度非適用先」の約2兆円が続き、「都市銀行」は約1.6兆円にとどまっています。

数字はあくまで試算だが、業態別にみるとそれぞれが抱える課題などがみえ、有益な材料である

「その他の準備預金制度適用先」の内訳は、+0.1%の適用額が約53.2兆円(全体の76.6%)、ゼロ%が約4.0兆円(同5.7%)、-0.1%が約12.3兆円(17.7%)で、受取利息を試算すると約409億円になります。同様に「都市銀行」をみると、+0.1%が約81.4兆円(全体の84.3%)、ゼロ%が約13.6兆円(同14.0%)、-0.1%が約1.6兆円(1.7%)、受取利息は約797億円です(図表2)。

両者を比較すると、相対的に当座預金残高の大きい「都市銀行」はマイナス金利適用額が少なく、相対的に当座預金残高の小さい「その他の準備預金制度適用先」はマイナス金利適用額が大きいことが分かります。これらの数字はあくまで試算ですが、ゆうちょ銀行など「その他の準備預金制度適用先」は、マイナス金利適用額をいかに効率的な運用にシフトするか、また「都市銀行」は預金者に手数料を課すなどしてマイナス金利を転嫁すべきか、これらについて考える際の材料にはなると思われます。

 

160223 図表1 160223 図表2

 (2016年2月23日)

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