2万円台回復後の日経平均株価を展望する
市川レポート(No.182)2万円台回復後の日経平均株価を展望する
- 12月1日の日経平均株価は、8月20日以来となる終値ベースでの2万円台を回復。
- ただし業績予想の目立った上方修正がないまま、ここから一段高となった場合は要注意。
- 日経平均株価の年初来高値更新には、利益見通しの改善につながる材料の顕在化が必要。
12月1日の日経平均株価は、8月20日以来となる終値ベースでの2万円台を回復
12月1日の日経平均株価は20,012円40銭と前日比264円93銭(1.3%)高で取引を終え、8月20日以来となる終値ベースでの2万円台回復となりました。この日は寄り付き前に発表された7-9月期法人企業統計で、全産業の設備投資額が前年同期比+11.2%と市場予想の+2.2%を大きく上回る結果となりました。これを受けて企業の設備投資行動に対する悲観的な見方が後退し、買い安心感につながったとみられます。
また前場に中国国家統計局と中国物流購入連合会が発表した11月の購買担当者景気指数(PMI)は、製造業が前月の49.8から49.6に悪化した一方、非製造業は53.1から53.6に改善しました。続いて発表された中国メディアの財新と英金融情報会社マークイットによる11月の製造業PMIは48.3から48.6に改善しました。このように各PMIはまちまちな結果になりましたが、夏場の急激な落ち込みからは持ち直しの兆しがみられ、日本株への影響は限定されました。
ただし業績予想の目立った上方修正がないまま、ここから一段高となった場合は要注意
11月20日付けのレポートでもお話しした通り、日本の輸出には底打ち感が出始めており、今回の法人企業統計で設備投資の伸びも確認できたことから、「中国の景気減速→日本の輸出減・設備投資縮小→日本の景気減速」という思惑での日本株売りはすでに過去のトレンドと考えられます。また年前半の株高局面でみられた「海外投資家の買いと個人の売り」という動きが足元で復活しており、相場の地合いの好転を示唆しています。
またこれも11月20日付けレポートで指摘した点ですが、このところ12カ月先の予想EPS(1株あたり利益)が伸び悩む一方で、12カ月先の予想PER(株価収益率)が切り上がってきています。そのため業績予想の目立った上方修正がないまま、ここから日本株の上昇ペースが一段と速まった場合、割高感が大幅に増す恐れがあります。そのような状況では、いったん調整が入ると下げ幅が大きくなることもあるので注意が必要です。
日経平均株価の年初来高値更新には、利益見通しの改善につながる材料の顕在化が必要
株価の一段高を正当化するには、利益見通しの改善が必要です。現時点で日本企業の業績に好ましい材料を考えた場合、①米利上げ後のグローバルな金融市場の安定、②中国景気の下げ止まり、③緩やかなドル高・円安の地合い、④政府・日銀の政策発動(景気対策や追加緩和)、などが挙げられます。これらの材料の顕在化は、業績予想を上方修正する方向に作用するものと思われます。
ごく短期的には、日経平均株価が節目の20,000円前後で予想される個人の利益確定売りをどの程度こなせるかがポイントになり、いったん反落する展開も想定されます。なお日経平均株価の終値ベースでの年初来高値は6月24日の20,868円03銭で、取引時間中の年初来高値も同日の20,952円71銭となっています(図表2)。年内および年度内に①~④の材料が顕在化した場合はこれら高値水準更新の可能性もみえてくると思われますが、そうでない場合は更新までにもう少し時間を要するとみられます。
(2015年12月2日)
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