ギリシャ支援合意の日本株への影響
市川レポート(No.111) ギリシャ支援合意の日本株への影響
- ユーロ圏首脳はギリシャ向け第3次金融支援について条件付きで合意。
- ギリシャ問題の方向性が確認できたことで、金融市場にはいったん安心感が広がる。
- 日本株は懸念材料を1つ消化、ただ米利上げまではやや不安定な値動きの可能性。
ユーロ圏首脳はギリシャ向け第3次金融支援について条件付きで合意
ユーロ圏19カ国は7月13日、首脳会議における約17時間の協議の後、ギリシャ議会が7月15日までに財政改革案を法制化して実行することを条件に、ギリシャへの金融支援を行うことで合意しました。結局ギリシャのチプラス首相は、欧州連合(EU)など債権団の緊縮要求をほぼ全面的に受け入れることになりましたが、これによってギリシャのユーロ離脱は回避される見通しとなりました。なおチプラス首相が受け入れた条件のなかには、500億ユーロ相当のギリシャ国有資産をギリシャ国内に創設する新しいファンドに移管し、民営化を加速することが含まれています。またチプラス首相が要求していた名目上の債務減免は認められませんでした。
ドイツ議会はギリシャにおける法制化を確認した後、ギリシャ支援の承認採決を行う予定です。ギリシャ向け第3次金融支援は欧州安定メカニズム(ESM)を活用し、820億~860億ユーロの規模になるとみられますが、ギリシャの資金繰りがひっ迫していることから、つなぎ融資についてユーロ圏財務相会合で協議が行われています。また欧州中央銀行(ECB)は今回の合意を受けて7月13日にギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)の上限据え置きを決定しました。第3次金融支援ではギリシャの民間銀行に250億ユーロ規模の資本注入が想定されており、今後はECBによるELAの上限引き上げが予想されます。
ギリシャ問題の方向性が確認できたことで、金融市場にはいったん安心感が広がる
金融支援の合意は日本時間の7月13日夕刻に報道されましたが、これを受けて為替市場ではドル高円安が進行し、1ドル=123円台を回復しました。またユーロ円も一時137円台後半まで上昇し、欧州株も総じて買いが優勢となるなど、金融市場は総じてリスクオン(選好)の動きが強まりました。その後の米国市場も株高、国債利回り上昇(価格は下落)で反応しています。ギリシャ問題の方向性が確認できたことで、金融市場にはいったん安心感が広がっています。今後は、7月15日までのギリシャ議会による財政改革案の法制化、7月17日以降のドイツ議会におけるギリシャ支援の採決、ギリシャ向けつなぎ融資の実行、7月20日のECB保有のギリシャ国債償還、ESMによるギリシャ向け融資実行という流れになります(図表1)。大きな波乱はないと予想されますが、滞りなく進展するか注意してみてしておく必要があります。
日本株は懸念材料を1つ消化、ただ米利上げまではやや不安定な値動きの可能性
以前にお話しした通り、第3次金融支援が実行された場合でも、それによってギリシャの財政問題が完全に解決される訳ではありません。支援後にはギリシャの財政改革の進展を見極める必要がありますし、またより大きな観点では、ユーロ圏全体の財政制度を改めて考える必要もあると思われます。それでもギリシャ問題に一区切りがついたことで、日本株にとっては目先の懸念材料が1つ消化されたとみています(図表2)。
ただしこれだけで日経平均株価の上昇が続く展開は見込み難いと考えます。中国株も政策によって取り敢えず落ち着きを取り戻していますが、引き続き警戒は必要です。またこの先、市場参加者の関心は再び米国の利上げに移っていくと思われます。早ければ9月にも行われるとみていますが、今回は金融政策の正常化という過去に例のない政策決定となります。そのため米国株のみならず日本株も夏場にかけて警戒感が強まり、利上げ開始まではやや不安定な値動きが続く時間帯に入る可能性があります。
(2015年7月14日)
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