ギリシャ問題の現状と展望

2015/06/01

市川レポート(No.82) ギリシャ問題の現状と展望

  • ギリシャ向け支援融資の再開を巡る交渉は難航中で、まだ楽観視はできない状況。
  • 第2次金融支援の融資が再開されても、第3次金融支援に向けた協議が必要に。
  • 最終的にはギリシャが財政改革を進めることで金融支援の枠組みは維持されよう。

 

ギリシャ向け支援融資の再開を巡る交渉は難航中で、まだ楽観視はできない状況

 ギリシャ向け支援融資の再開を巡り、欧州連合(EU)などの債権団とギリシャ政府の交渉が難航しています。EU側はギリシャ政府に対し、年金減額や最低賃金の引き上げなど財政改革の具体策を提出するよう求めていますが、ギリシャ側が年金減額などは選挙公約に違反するため受け入れられないとしており、議論は平行線が続いています。5月27日には、両者が事務レベルでの合意文書の作成に着手との報道が一部にみられましたが、その後EU当局者がそれを否定するなど、ニュースの見出しに金融市場が一喜一憂する展開も相変わらず続いており、交渉のゆくえについてはまだ楽観視できない状況です。

 目先、ギリシャの債務返済スケジュールは図表1の通りです。国際通貨基金(IMF)への返済額は6月で合計約15億ユーロとなっており、6月5日には約3億ユーロの返済期限を迎えます。なお米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)をはじめとする複数の大手格付け会社は、ギリシャが期限までにIMFへ返済できなくても、IMFは公的債権者であることから、債務不履行(デフォルト)には相当しないとの見解を示しています。そのためIMFの返済が滞ってもギリシャ国債はデフォルト扱いとならず、欧州中央銀行(ECB)がギリシャ民間銀行の生命線である緊急流動性支援(ELA)の継続を反対して、ELAが打ち切られる事態は回避されると考えます。

第2次金融支援の融資が再開されても、第3次金融支援に向けた協議が必要に

 そのためギリシャはIMFの承認を得た上で債務を6月末の一括返済とし、その間に協議を続ける可能性があります。想定されるシナリオとしては、年金減額などに関する合意をいったん先送りする代わりに、財政改革の具体策の一部実行をギリシャ政府が確約することで、凍結していた37億ユーロの融資をEU側から受けるというものです。ただEUなど債権団によるこの第2次金融支援は6月末に期限が切れるため、7月と8月に大量の国債償還が控えていることを考えると、第3次金融支援に向けた協議が必要になると思われます。

最終的にはギリシャが財政改革を進めることで金融支援の枠組みは維持されよう

 なおECBが保有する国債の償還が遅れた場合のデフォルト判断については、格付け会社の間で見解が分かれており、緊急流動性支援(ELA)の継続可否についても難しい判断になる可能性があります。ただギリシャのユーロ離脱懸念は行き過ぎた見方と考えます。ギリシャはユーロを離脱した場合、ユーロに代わって導入される新通貨は、ユーロに対し大幅な減価が予想されるため、ユーロ建ての債務額は急増します。また通貨安は国内物価を押し上げ、深刻なインフレを招く恐れがあります。さらに海外資本の流出が加速すれば、国内の資本市場の動揺は避けられません。
一方EU側にとっても、1カ国でもユーロ離脱という前例を作ってしまうと、約60年に及ぶ経済統合の核となる単一通貨制度が揺るぎかねないため、回避すべき事態です。したがって双方が望まないユーロ離脱の発生確率は極めて低いということになります。引き続きギリシャ問題には注意が必要ですが、最終的には融資を受けるギリシャ側は融資を行うEU側の要求に従わざるを得ないと思われます。結局、現実的な落としどころをみつけてギリシャが財政改革を進めることで、金融支援の枠組みは維持されると予想します。

 150601 図表1150601 図表2

 (2015年6月2日)

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