米国と主要貿易相手国との関税交渉アップデート

2025/05/09

米国と主要貿易相手国との関税交渉アップデート

        • 米英が関税交渉で合意、トランプ氏が対中関税引き下げの可能性にも言及し、市場はリスクオン。
        • 米中は今週末に貿易問題を協議、日米関税交渉3回目の閣僚協議は5月中旬以降の見通し。
        • 市場は当面関税交渉の報道に一喜一憂の展開か、米国はディール成立で関税修正を進めよう。

米英が関税交渉で合意、トランプ氏が対中関税引き下げの可能性にも言及し、市場はリスクオン

米国と英国は5月8日、関税措置を巡る交渉で合意したと発表しました。それによると、米国が英国から自動車を輸入する際にかかる27.5%の関税について、年間10万台までは10%に引き下げられ、また、鉄鋼・アルミニウム製品に課される25%の追加関税について、英国からの輸入品は0%に引き下げられることになります(図表1)。ただ、米相互関税の基本税率10%は、英国に対しても維持されます。

米国は、この合意によって英国市場へのアクセスが大幅に拡大し、エタノールで7億ドル以上、牛肉を含む他の農業製品で2億5,000万ドル以上など、新たに50億ドルの輸出機会を生み出すとしています。また、トランプ米大統領が同日、対中関税引き下げの可能性に言及したことも好感され、米金融市場では主要株価指数が上昇するなど、リスクオン(選好)の動きが広がりました。

米中は今週末に貿易問題を協議、日米関税交渉3回目の閣僚協議は5月中旬以降の見通し

米国と主要貿易相手国との関税交渉では、今回が初めての合意となり、中国など他国との協議も進展するのではないかとの期待が市場でもみられます。なお、米国と中国の政府高官は今週末にスイスで会合を開き、貿易問題について協議する見通しとなっており、米国からはスコット・ベッセント財務長官と通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表が、中国からは何立峰副首相が、それぞれ出席する模様です。

一方、日本も米国との関税交渉は、事務レベルで協議を行っており、5月中旬以降に3回目の閣僚協議を実施するため、日程の調整を進めています。5月1日に行われた2回目の閣僚協議では、米国側が合意に向けた「枠組み案」を提示したものの、相互関税を主な対象とし、自動車や鉄鋼・アルミニウムの関税引き下げに難色を示す内容だったため、日本側は一連の関税措置の包括的な見直しを改めて求めるなど、両国の立場の隔たりもみられました。

市場は当面関税交渉の報道に一喜一憂の展開か、米国はディール成立で関税修正を進めよう

市場では引き続き、米国と主要貿易相手国との関税交渉の行方が焦点となっており、特に今週末の米中協議が注目されます。なお、中国商務省は5月2日、報道官の談話を発表し、交渉を望むなら誠意を示すよう米国に促しました。弊社は中国政府の考え方として、対中関税の145%から54%への引き下げが交渉の出発点になるとみており、米国が先行して大幅に譲歩しない限り、交渉は進展しにくいと考えています。

この先は、米中や日米の関税交渉の進展に関するニュースに、市場が一喜一憂する展開も予想されます。なお、4月23日付レポートで、ドル円の方向性に影響を与え得る材料としてまとめたものを、一部抜粋・編集し、図表2に再掲しました。現実的には、上乗せ税率分を含む相互関税が長く続くことは考えにくく、米国はディール(取引)成立をもって関税を修正し、図表2の下段の材料で相場が動いていく可能性が高いとみています。

 

 

 

(2025年5月9日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会