バイデン米大統領の予算教書について
バイデン米大統領の予算教書について
- バイデン米大統領は2022会計年度の予算教書を公表し、6兆110億ドルの歳出規模を示した。
- 財政赤字は2031会計年度まで毎年度1.3兆ドル超、ただ今回の予算教書の内容は想定通り。
- 議会は予算審議開始へ、バイデン米政権や議会の動きで予算教書の規模や内容が変わることも。
バイデン米大統領は2022会計年度の予算教書を公表し、6兆110億ドルの歳出規模を示した。
バイデン米大統領は5月28日、2022会計年度(2021年10月~2022年9月)の予算教書を公表しました。教書とは、米大統領が議会に対し、口頭もしくは文書で行う報告や勧告のことで、予算教書は、一般教書や大統領経済報告と並ぶ「三大教書」の一つです。バイデン米大統領は、今回公表した予算教書で、自身の税財政に関する運営の方針を明らかにしました。
予算教書には、すでに発表された2つの経済対策、すなわち「米国雇用計画(American Jobs Plan)」と「米国家庭計画(American Families Plan)」が含まれており、これらを実行するため、法人税などの税制改正が提案されています。バイデン米大統領は、2022会計年度の歳出規模を6兆110億ドルとしましたが、これは予算教書で当初示された歳出としては戦後最大の規模となります。
財政赤字は2031会計年度まで毎年度1.3兆ドル超、ただ今回の予算教書の内容は想定通り
また、予算教書では、2022会計年度の財政赤字は1兆8,370億ドルに達し、2031会計年度までの財政赤字は、毎年度1兆3,000億ドルを超えるとの見方が示されました(図表1)。そして、債務残高について、2022会計年度は26兆2,650億ドル、対GDP比で111.8%の見通しになっていますが、2031会計年度は、39兆590億ドルに増加し、対GDP比で117%に上昇することが見込まれています(図表2)。
ただ、今回の予算教書は、歳出規模や内容について、ほぼ想定通りのものであり、特段、目新しい点は見当たりませんでした。予算教書では改めて、バイデン米大統領が、財政支出などを通じて経済活動に積極的に介入する、いわゆる「大きな政府」への傾斜を強める姿勢が確認されました。しかしながら、そもそも予算教書には、何ら法的な強制力はなく、予算は議会で立案され、審議が行われます。
議会は予算審議開始へ、バイデン米政権や議会の動きで予算教書の規模や内容が変わることも
その議会は、予算教書の公表を受け、予算審議を開始し、「予算決議」、「歳出予算法」、「財政調整法」について、それぞれの法案を審議、可決していきます。予算決議は、歳出、歳入、財政収支など、予算の全体像を固めます。歳出予算法は、各省庁の年度予算を定め、裁量的経費(国防費など)の歳出を可能とします。財政調整法は、義務的経費(社会保障など)や税制を変更する際の恒久法の改正に、重要な役割を果たします。
つまり、経済対策や税制改革は、議会の審議で、規模や内容が変わることがあります。実際、バイデン米政権は5月21日、米雇用計画の規模について、当初の2兆2,500億ドルから1兆7,000億ドルに縮小すると発表しました。これは議会での予算審議を念頭に、野党共和党との超党派の合意を目指すものと考えられます。今後は、このような動きを通じ、経済対策や増税の規模を見極めることになると思われます。
(2021年5月31日)
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