ワクチン接種の進展と株価の関係
ワクチン接種の進展と株価の関係
- 英国や米国ではワクチンの接種が進み、行動制限を順次緩和する動きがみられるようになっている。
- ワクチン接種の進展に対し、米国市場は株高、長期金利の上昇、バリュー株の選好という反応に。
- 一方、日本の株価は低調、主要国に比べワクチン接種が遅れており、これが影響している可能性。
英国や米国ではワクチンの接種が進み、行動制限を順次緩和する動きがみられるようになっている
英オックスフォード大学が運営するOur World in Data(データで見る私たちの世界)では、世界各国の新型コロナウイルスワクチンの接種状況を確認することができます。直近のデータに基づき、主要国について、少なくとも1回の接種を受けた人の総人口に占める割合をみると、イスラエルが約63%、英国が約51%、米国が約45%、ドイツが約29%、フランスが約24%となっており、日本はまだ約2%にとどまっています。
ワクチンの接種が進む英国や米国では、行動制限緩和の動きも出てきました。英国では、ジョンソン首相が夏までにイングランドの経済活動をコロナ前とほぼ同じ状態に戻すことを目指しています。また、米国では、疾病対策センター(CDC)がワクチン接種者の行動指針を順次緩和しており、ニューヨーク市のデブラシオ市長は、7月1日に市内の経済活動を全面的に再開する方針を示しています。
ワクチン接種の進展に対し、米国市場は株高、長期金利の上昇、バリュー株の選好という反応に
なお、ワクチン接種の進展に対する市場の反応としては、一般に、経済活動の正常化を織り込む形での「株高」、「長期金利の上昇」、「バリュー株の選好」などが考えられます。そこで、昨年12月に接種が始まった米国市場の反応を確認してみます。図表1は、少なくとも1回の接種を受けた人の米総人口に占める割合と、S&P500種株価指数の推移を示したものですが、接種の進展につれ株価が堅調に推移していることが分かります。
接種データが得られる前営業日の2020年12月18日を基準とした場合、2021年5月5日までの間、S&P500種株価指数の上昇率は12.4%、米10年国債利回りの上昇幅は約0.62%でした。また、S&P500バリュー指数の上昇率は16.9%に達した一方、S&P500グロース指数の上昇率は8.4%にとどまっており、バリュー株選好の様子がうかがえます。つまり、ワクチン接種の進展に対する米国市場の反応は、おおむね想定内といえます。
一方、日本の株価は低調、主要国に比べワクチン接種が遅れており、これが影響している可能性
次に、ワクチンの接種が今年の2月に始まった日本のケースを検証してみます。接種データが得られる前営業日の2021年2月16日を基準とした場合、2021年4月30日までの間、日経平均株価は5.4%、東証株価指数(TOPIX)は3.4%、それぞれ下落しました。参考までに、S&P500種株価指数について、同期間の騰落率を見ると、6.3%の上昇となっています。
なお、同じ期間において、日本の10年国債利回りは、0.01%程度の上昇にとどまり、TOPIXバリュー指数は0.6%下落、TOPIXグロース指数は6.2%下落という結果になりました。日本の場合、バリュー株のパフォーマンスがグロース株を上回ったものの、やはり主要国に比べワクチンの接種が大幅に遅れているため、経済活動の正常化を織り込む度合いは弱く、これが株価の重しになっている恐れがあります(図表2)。
(2021年5月6日)
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