SQ通過後の株安は想定の範囲内
市川レポート(No.646)SQ通過後の株安は想定の範囲内
- 先週の日経平均の上昇とその後の下落はメジャーSQ絡みの取引による一時的な動きと思われる。
- 3月4日の21,800円台回復は想定内、ただ先物などのポジション調整が進み、大幅高とはならず。
- SQ後の株安も想定内、この先日本株は徐々に下値を固め慎重ながらも上値を試す展開を予想。
先週の日経平均の上昇とその後の下落はメジャーSQ絡みの取引による一時的な動きと思われる
先週の日経平均株価の動きを振り返ると、3月4日の取引時間中に21,860円39銭の高値をつけた後、週末にかけて大きく値を崩す展開となり、3月8日には節目の21,000円を割り込んで、一時20,993円07銭の安値をつけました。このような値動きだけみると、日経平均株価は上昇の持続性に乏しく、依然として不安定な地合いが続いているように思われます。
なお、先週は3月7日が3月物の日経225先物とオプションの最終取引日、8日が特別清算指数(SQ)の算出日でした。今回のSQは、先物とオプションの清算が重なる「メジャーSQ」だったこともあり、先週の日経平均株価の上昇とその後の下落は、このメジャーSQに絡む取引が相当程度影響したものと推測されます。つまり、日経平均株価の変動は、一時的な需給要因によるものだったと考えられます。
3月4日の21,800円台回復は想定内、ただ先物などのポジション調整が進み、大幅高とはならず
3月4日付レポート「日経平均株価とメジャーSQ」で説明した通り、3月物の日経225先物とオプションの建玉(たてぎょく、未決済残高のこと)は、日経平均株価が21,500円を超えると、上昇に弾みがつきやすいポジションとなっていました。実際、日経平均株価は、3月4日に21,800円台まで上昇しましたが、これはある程度、想定されていた動きといえます。
ただ、日経平均株価は一気に22,000円台を回復するまでには至りませんでした。これは、3月7日の最終取引日を前に、3月物の日経225先物とオプションのポジション調整が、比較的ゆっくりと進んだためと思われます。具体的に、日経225先物の建玉をみると、3月物から6月物へのロールオーバーが順調に進んだことが分かります(図表1)。つまり、先物の売り手は、今回はあわてて先物を買い戻さず、売りポジションを6月に持ち越したため、日経平均株価は一段高にならなかったと考えることができます。
SQ後の株安も想定内、この先日本株は徐々に下値を固め慎重ながらも上値を試す展開を予想
また、日経平均株価は3月4日から6日まで、21,000円台後半で比較的落ち着いた動きが続きました。そのため、行使価格21,500円の3月物コールオプションの建玉も、ゆっくりと整理が進みました(図表2)。その結果、21,500円のコールオプションの売り手が、日経平均株価の上昇で損失を被っても、急いで日経225先物を買い、先物の利益でオプションの損失を補てんしようとする動きは限定的となりました。
このように、日経平均株価の上昇が、メジャーSQに絡む先物やオプション主導によるものであれば、上昇は一時的なものとなり、SQ通過後に株価が反落することも起こり得ます。その意味で、先週の動きは上昇も下落も想定の範囲内だったといえます。改めて、この先の日本株を見通す上では、米中貿易協議の進展や米中経済指標の持ち直しなどで、世界景気に対する悲観的な見方が後退するか否かがポイントです。やや長い目でみれば、日本株は徐々に下値を固め、慎重ながらも上値を試す展開を引き続き予想しています。
(2019年3月12日)
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