米雇用統計、金融市場は米労働市場の強さを再確認
▣ 良好な米雇用統計を受け、米金利上昇、FRBは12月利上げへ
11月2日に米労働省が発表した10月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比25万人増となり、市場予想(19~20万人増)を上回りました(図表1)。失業率は3.7%と前月から横ばいで、労働参加率の上昇にもかかわらず49年ぶりの低水準を維持したほか、平均時給は前年比3.1%増と、9年半ぶりの高水準となりました(図表2、3)。
為替市場での、ドル高・円安の進行は限定的でしたが、労働市場の一段の引き締まりが示されたことで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続するとの観測が強まり、長期金利(米10年債利回り)は3.13%程度から2日には3.21%まで上昇しました(図表4)。また、金利上昇への警戒が米国株下落の一因になりました。
FRBの使命である“物価の安定”と“雇用の最大化”がほぼ達成されつつある中、金融市場が織り込む12月の利上げ確率は再び80%を超え、年内あと1回の利上げはほぼ確実視されている状況です。
▣ 2014年以降は、労働参加率が下げ止まる中、失業率は低下傾向
非農業部門雇用者数については、米国経済の維持に毎月10万人、成長継続には20万人以上の増加が必要と言われています。10月分は25万人増でしたが、9月分については、11.8万人増と、13.4万人増から下方修正されました。ただ、振れが大きい単月ではなく3か月平均で均すと、21.8万人と目安の20万人を上回り、米労働市場は堅調さを維持しています。
16歳以上の人口に占める就業者および求職者の割合である労働参加率は、リーマン・ショック以降、職に就くことを諦める人が増加したため低下傾向が続いていました。2014年以降、この労働参加率が下げ止まる中、失業率が低下していることも米労働市場の強さと言えそうです。また、米中貿易摩擦の悪影響もこれまでのところ限定的のようです。
▣ インフレが加速し、FRBが利上げを急ぐ状況ではなさそう
10月の平均時給の伸びは前年比3.1%まで上昇しました。ただ、昨年10月の平均時給がハリケーンの影響で落ち込んだ(前月比マイナス0.2%)ことが、今年10月の平均時給の伸びを前年比で押し上げており、11月には若干鈍化するとみられます。他方、FRBがインフレの指標として重視するPCEデフレーター(個人消費支出価格指数)、食品とエネルギーを除くPCEコアデフレーターは、前年同月比で9月はプラス2.0%となるなど、FRBのインフレ目標2%前後で安定した推移になっています。もっとも、昨年携帯サービスの価格が大幅に下落したことが影響している(今年のインフレ率を押し上げている)可能性があり、インフレが加速するとの観測は広がっていません。
インフレが加速し、FRBが利上げを急ぐ状況ではないため、米長期金利の一段の上昇は限定的とみられ、ドル円の上値もやや重くなる可能性があります。また、米国株は雇用者数の増減に歩調を合わせて(やや先行して)推移してきました(図表5)。もうしばらくは、堅調な米労働市場が米国株を下支えすることが期待されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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