米利上げ局面でのドル円、米長期金利
▣ 日銀の金融政策は当分現状維持が見込まれ、為替を動かす材料にはなりにくい
ドル円については、輸出入や資本取引等の実需以上に、日米の金融政策、金利の動き、投資家心理(リスク回避姿勢が強まると、円が買われる)などに大きな影響を受けます。日本の長期金利がゼロ%付近で推移する中、2015年以降、ドル円は米国の長期金利に連動する動きが続いています(図表1)。2016年7、8月に米長期金利に比べて下振れしたのは、日銀が追加の金融緩和策で、ETFの買入れ額を倍増させただけで、政策金利の引下げや国債買入れ額の増額などに踏み込まず、日銀の金融緩和への期待が大きく剥落したのが主因と考えられます。
足元ではマイナス金利政策や巨額の資産買入れの弊害も懸念され、一段の追加緩和の可能性が大きく後退しています。一方、低インフレが続く中、出口戦略(金融政策の正常化)は遠い先の話になっています。日銀の現行の金融政策が維持されている間は、日銀の金融政策は為替を大きく動かす材料にはなりにくいとみられます。
▣ 米長期金利が当面レンジでの動きになると、ドル円の方向性も出にくいか
他方、米国については緩やかな利上げ局面にあります。また、米連邦準備制度理事会(FRB)は10月から、バランスシート(米国債などの保有資産)の縮小を開始しました。日米の金融政策の方向性からは、非常に緩やかなドル高・円安といえそうです。
もっとも、米長期金利については、前回の2004年6月からの利上げ局面でも、終盤近くまで一進一退の動きが継続しました(図表2)。因みに、FRBが利上げを決めた2004年6月30日の米長期金利(10年債利回り)は4.58%、米長期金利が政策金利と同水準になる2006年1月までの、米長期金利のレンジは3.80%~4.69%。利上げ局面でも、米長期金利の上昇は限定的でした。
今回の利上げ局面では、利上げを決めた2015年12月16日の米長期金利は2.3%程度で、以降のレンジは1.32%~2.64%。前回より緩やかな利上げペースが見込まれ、米長期金利が2%前半で推移した場合には、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利見通しを前提にすると、米長期金利と政策金利が同水準になるのは2019年に入ってからとなります。
▣ 目先は上昇圧力も
米議会上院は10月19日、中期的な財政の大枠を定める2018会計年度(2017年10月~18年9月)予算の予算決議案を可決しました。下院が上院と同じ決議案を可決すれば成立すると伝えられています。税制改革によって10年間で1.5兆ドルの減税を容認する内容で、トランプ政権が目指す税制改革の実現に一歩前進した格好です。景気拡大への期待に財政悪化懸念が加わり、米長期金利には押し上げ圧力が若干強まりそうです。
また、次期FRB議長人事も、米金利やドル円に影響を与えそうです。イエレン議長再任や金融政策について中立とみられるパウエルFRB理事なら、緩やかな利上げペースが維持されるとの見方が広がりそうです。他方、量的緩和政策に批判的なウォーシュ元FRB理事、利上げに前向きな米スタンフォード大学教授で元財務次官のテーラー氏なら、利上げへの警戒が広がり、米長期金利がやや押し上げられる可能性があります。もっとも、米金融政策はデータ次第で、インフレ率が加速しない限り、政策金利の引き上げペースを加速させることにも限界があります。
米長期金利は当面レンジで推移するのがメインシナリオですが、目先は上昇圧力が強まることも想定され、ドル円も上値を試す可能性もありそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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