公的年金のポートフォリオ見直し状況

2017/07/13 <>

▣ GPIFの資産割合は、ほぼ基本ポートフォリオの水準

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済(地共済)、日本私立学校振興・共済事業団(私学共済)の平成28 年度の業務概況書が、7月7日に発表されました。

GPIFの平成28年度の運用の主なポイントは以下のとおりです。

  • 国内債券を減らす一方、外国債券を買い増す動きは継続(国内債券の償還金を再投資せず外国債券に振り向けている可能性)
  • 国内株式、外国株式については、積極的な売却や買入れはなかった模様
  • 3月末の国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、短期資産の構成割合は、それぞれ31.68%、23.28%、13.03%、23.12%、8.89%
  • ただ、短期資産を除くとそれぞれ35%弱、25%強、14%強、25%強となり、ほぼ基本ポートフォリオの構成割合の水準

平成25年11月の「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」での提言を受け、国内債券の割合を減らし、内外の株式や外国債券の割合を引き上げてきました。平成28年度末で、株式だけでなく、債券についてもほぼ基本ポートフォリオ(国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%)の水準に達したとみられます。GPIFは構成割合を維持するため、相場が上昇すれば売却、下落すれば買い増しする、巨大な逆張りの投資家と言えそうです。とはいえ、基本ポートフォリオからのかい離を国内株式については±9%許容します。急落局面での買い支えだけでなく、押し上げ余力も残してはいます。

また、日銀が強力な金融緩和策を堅持する姿勢を示す一方、米国では利上げやバランスシートの縮小、欧州中央銀行(ECB)も量的緩和策(資産買入れ)の縮小などが見込まれ、日本と欧米の金融政策の方向性の違いが一段と明確になっています。内外の債券についても基本ポートフォリオの水準に達していますが、国内債券の残高を維持していくのか、引き続き国内債券を減らし、外国債券を増やしていくのか注目されるところです。

▣ 3共済は

3共済の基本ポートフォリオは、許容かい離幅は異なるもののGPIFと同じ構成割合。3月末のKKRについては国内債券の割合が50%を超えており、国内株式の割合を引き上げる余地はあるとみることもできます。もっとも、国内債券には財政融資資金預託金が多く(資産全体の43.25%)含まれていることから、国内債券の割合引下げには限界がありそうです。

私学共済についても、ほぼ基本ポートフォリオの水準に達しています。地共済については、国内債券の割合が40%程度とまだ高い水準ですが、国内株式の割合が25%前後まで上昇していることから、今後のポートフォリオの見直しについては、外国債券、外国株式の割合引上げが中心になる可能性が高そうです。

 

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