日本株は出遅れを取り戻せるか

2016/03/25

1.ドル円の戻りの鈍さが日本株の重し

今年に入り、中国などの世界経済の先行き懸念に加え、原油価格の下落、米経済の先行き不安、欧州金融機関の信用不安などを背景に、大きく混乱した内外の金融市場ですが、2月半ば以降、やや落ち着きを取り戻しています。内外の金融市場で投資家心理が改善し、恐怖指数と呼ばれるVIX指数も昨夏のチャイナショックが落ち着いた15ポイント前後の水準まで低下、またNYダウは年初来高値まで上昇しています(図表1、2)。

日本株については持ち直してきているものの、上昇は鈍く米株に比べ出遅れがやや目立ってきています。日本版のVIX指数である日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)も低下してきているものの、まだ低下しきっておらず、不安感が若干残っている状況です。

この不安感の原因の一つに円高への警戒が根強いことが挙げられます。年初から金融市場の混乱を背景に逃避通貨である円を買う動きが強まり、ドル円は大きく下落しましたが、金融市場が落ち着いてきても、ドル円の戻りは鈍い状況です(図表3)。

このドル円の動きの背景には、2月に開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において、通貨の競争的な切り下げを回避することで合意し、日銀のサプライズ緩和による円の大幅な下落への期待が後退したこと、また米国の利上げ観測が後退したことがあるとみられます。米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとともに、政策金利見通しを大幅に引き下げました。また、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、さらなる利下げに慎重な姿勢を示したことを受け、日銀やECBの金融政策が限界に近づいているとの見方も、円安を抑制している可能性があります。

2.日米の金融政策の方向性の違いからは

もっとも、内外の金融市場が落ち着きを取り戻す中、米経済も緩やかながらも回復局面にあります。利上げに慎重なハト派と見られていた米シカゴ連邦準備銀行のエバンス総裁が、「経済見通しを基にすると、今年はあと2回の利上げがあると見込んでいる」と、やや利上げに前向きな姿勢を示しています。他の連銀総裁からも早期利上げに前向きな発言が相次いでいます。大幅な円の下落は見込めなくなってきましたが、日米の金融政策の方向性の違いからは、ドル高・円安方向と言えそうです。

他方、金融政策の限界が懸念される中、政策の軸足が財政政策に移りつつあります。G20の声明では、“金融政策は経済活動と物価安定を支えるが、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。財政の健全性に配慮しつつ、経済成長、雇用創出及び信認を強化するため、財政政策を実施する”、としています。G20で議長を務めた中国は、3月に開かれた全国人民代表大会(全人代)で、人民元の再切り下げを否定するとともに、財政出動強化を明言しました。

増産凍結に向けた産油国の協議やEU離脱を問う英国の国民投票などを警戒しつつも、ドル円がしっかりした動きになり、消費再増税先送りや財政出動などの蓋然性が高まると、日本株の出遅れ感も解消に向かうことが見込まれます。

20160325

 

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