ECBは包括的な追加緩和策を決定
1.予想を上回る追加緩和策、利下げは打ち止め
欧州中央銀行(ECB)は3月10日、主要3金利の引き下げに加え、資産買入れ額の拡大、長期資金供給オペの実施を決めました(図表1)。
昨年12月の追加緩和では、下限金利の中銀預金金利の引き下げだけでしたが、今回は主要政策金利(リファイナンス金利)、上限金利の限界貸出金利についても引き下げました(図表2)。資産買入れ額については、月間600億ユーロから800億ユーロに拡大し、市場予想の700億ユーロを大きく上回りました。また、買入対象に社債を加えるとともに、新たに6月から期間4年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTROⅡ)を実施することも決めました。
市場は、事前の予想を大きく上回る追加緩和策だったことから、欧米市場では株高、ユーロ安、債券高(利回り低下)で反応しましたが、その後ドラギECB総裁が「現状およびECBの政策を考慮すると、さらに利下げが必要になるとは予想していない」と発言したことを受け、株安、ユーロ高、債券安に転じてしまいました。
これまでも、マイナス金利での1回の引き下げ幅は10bp(0.1%)刻みにとどめてきており、マイナス金利の引き下げにはやや慎重姿勢がみられていましたが、今回のドラギ総裁の発言で、追加利下げへの期待は大きく後退することになりそうです。短期金融市場が織り込む将来の短期金利の水準も、下向きからほぼ横ばいに変わっています(図表3)。今後は、金利よりも、資産購入や長期の資金供給に金融政策の軸足が移ることになりそうです。
2.しばらくは、追加緩和の浸透見極め
同日公表された経済見通しでは、2016年のユーロ圏の物価上昇率予想を、原油安を背景に2015年12月時点の1.0%から0.1%に大幅に下方修正しました。2017年は1.3%で、ECBの物価目標である2%弱に当面届かない見通し。 また、2016年の経済成長率見通しについても新興国の景気減速などを考慮し、1.7%から1.4%に引き下げました。2014年6月からマイナス金利導入、2015年3月からは国債買入れを開始しましたが、景気低迷や低インフレが解消されていない状況です(図表4)。
ドラギ総裁の発言は、ネガティブサプライズとなってしまいましたが、マイナス金利政策、量的緩和政策は続きます。マイナス金利拡大に歯止めをかけ銀行収益に配慮するとともに、銀行にマイナス金利で資金供給し融資を促す仕組みも作りました。しばらくは、ECBの金融政策の浸透を確認していくことになります。
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