米金融引き締め前後の内外金融市場

2015/12/09 <>

前回の米国の利上げ局面は、2004年6月末に利上げが開始され、2年後の2006年6月末に最終利上げが決定されて、利上げ終了となりました。今月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されると、利上げ開始は11年半ぶり、利上げは9年半ぶりということになります。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)はリーマンショック以降、ゼロ金利政策とともに、米国債などを買い入れる量的緩和政策を実施してきました。3回目の量的緩和政策(QE3)は、2013年12月に毎月の購入額の減額(テーパリング)を決定、2014年1月から減額が開始され、同年の10月に終了しました。金融引き締めという意味では、このテーパリング開始についても、大量のドル供給が細る(終了する)として、内外の金融市場で警戒されました。

来週の利上げ開始の可能性が高いことから参考として、①2004年6月末の利上げ決定時、②2013年12月のテーパリング開始決定時の前後の金融市場の動きを改めて見てみると、以下のようになります。

  • 米株:①では利上げ前からやや上値の重い動きとなり、利上げ開始以降ももみ合いが継続。②では一旦下落も、上昇基調は変わらず(図表1)
  • 米国の長期金利:①、②ともに決定前に引き締めを織り込む形で上昇し、決定後には落ち着いた動きに(図表2)
  • 日本株:①、②ともに決定後に一旦調整が入り、もみ合った後、持ち直す動きに(図表3)
  • 日本の長期金利:①では利上げ前に大きく上昇した後、利上げ開始後はもとの水準に戻る動きに。②では、2013年5月に当時のバーナンキFRB議長が、テーパリング開始を示唆したことを受け、長期金利が大きく上昇したこともあり、テーパリング決定前の上昇は限定的。決定後は緩やかに低下(図表4)
  • 為替:ドル指数は①では事前に上昇していたことから、利上げ開始後は一旦もみ合いに。②では動きなし(図表5)。ドル円は、①では方向感は定まらず。ただ、この時期は米国で財政赤字や経常赤字(貿易赤字)の“双子の赤字”が問題になっており、ドルはやや弱含んでいた局面で、利上げ開始の影響は限定的。②では、決定前に上昇した後、テーパリング開始でもみ合いに(利上げではないので影響も限定的、図表6)
  • リート:米国リートは①、②とも、一旦調整した後、決定後には堅調地合いに(図表7)。東証REIT指数は、良好な需給や長期金利の落ち着きを背景に、①、②ともに影響は限定的で、決定後も底堅い動きが継続(図表8)

20151209

為替については米国の双子の赤字の問題があり、あまり参考になりませんが、株や長期金利等については、過去、金融引き締め後には落ち着いた動き(底堅い動き)になっていることは安心材料です。もっとも、ドル高が予想外に進行すると、米国経済だけでなく新興国経済への悪影響も懸念されます。しばらくは、利上げの有無、金融市場の落ち着きを確認したいところです。

 

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