IMF 世界経済見通しメモ(2022 年 7 月)

2022/07/27

▣ 2022年世界成長率を3.2%に下方修正

国際通貨基金(IMF)は7月26日に改訂した世界経済見通しで、2022年の世界全体の経済成長率を3.2%とし、4月の前回見通し(3.6%)から引き下げました。下方修正は3回連続となります。

IMFは今回の下方修正について、米国や主要欧州諸国を中心に世界全体で物価上昇率が予想を上回り、金融環境の引締めを招いたこと、新型コロナウイルスの感染拡大とロックダウン(都市封鎖)を受けて中国の景気が予想以上に減速したこと、また、ウクライナにおける戦争による負の波及効果などを理由に挙げています。

2023 年についても、インフレ抑制的な金融政策(金融引締め)の影響が出ると見られることから、世界の成長率は2.9%(前回見通し3.6%)にとどまるとしています。

また、世界の物価上昇率は、食料・エネルギー価格、および長引く需給の不均衡を理由として、今年のインフレ率は先進国では6.6%、新興市場国・発展途上国では9.5%と、それぞれ0.9%ポイント、0.8%ポイント上方修正されました。

▣ 米国、中国、ユーロ圏の3大経済国・地域が失速

米国については、家計の購買力低下とさらなる金融引締めにより、2022年と2023年の成長率はそれぞれ2.3%、1.0%に減速すると予測しています。

中国については、度重なるロックダウンや深刻化する不動産危機を理由に、2022年の成長率予測が前回の4.4%から3.3%まで引き下げられました。

ユーロ圏の成長率については、ウクライナ戦争と金融政策引締めを反映し、2022年と2023年の予測がそれぞれ2.6%、1.2%に下方修正されました。

日本の成長率についても、2022年の予測が前回の2.4%から1.7%に、2023年も2.3%から1.7%に引き下げられました。

▣ 下振れリスクが遥かに優勢

IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は、「見通しは4月以降大きく暗転した。世界経済は2年前に景気後退を迎えたばかりだが、今再びその瀬戸際に立たされている」と指摘しています。

下振れリスクとして、

  • ウクライナ戦争により、ロシアが欧州へのガス供給を突如遮断する可能性
  • 労働市場の過剰にタイトな状態が継続することや、インフレ期待の不安定化などにより、インフレの高止まりが常態化する恐れ
  • 世界の金融環境がさらにタイト化すると、新興市場国・発展途上国に過剰債務の波が生じる可能性
  • コロナ禍が再び拡大し、ロックダウンを講じれば、中国の成長がさらに抑制される可能性
  • 食料・エネルギー価格が広範に渡る食料不安と社会不安を引き起こす恐れ
  • 地政学的な分断が世界貿易や国際協調を阻害する可能性

等を挙げています。

また同氏は、ロシアが欧州へのガス供給を完全遮断する場合など、上記のリスクが一部実現することを想定した代替シナリオでは、2022年の世界経済成長率は約2.6%、2023年は2%にまで大幅に減速し、米国とユーロ圏の2023年の成長率はほぼゼロとなるとしています。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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