足元の金利上昇をどう見るか

2019/11/13 <>

▣ 内外の長期金利は持ち直し

金融緩和観測や実際の利下げを背景に、日米欧の長期金利は低下基調が続いていましたが、9月に入り米中貿易摩擦への懸念や英国の合意なき欧州連合(EU)離脱への警戒感が後退したことに加え、米利下げはあくまでも予防的な利下げにとどまるとの認識が広がり、過度な利下げ観測が後退したことなどを背景に、内外の長期金利は持ち直しています(図表1、2)。大きく低下していた金利の動きに修正が入った格好です。

米長期金利は11月12日時点で1.93%程度と、7月末以来の水準まで上昇、9月4日に一時マイナス0.295%まで低下した国内の長期金利も、日銀が超長期金利の低下を抑制する姿勢を見せていることも手伝い、11月12日にはマイナス0.03%まで上昇しました。

▣ 市場の利下げ観測がさらに後退すると

米短期金融市場が織り込む将来の米政策金利の水準も上昇しており、年内は利下げなし、来年についても利下げが1回あるかないかの水準です(図表3)。仮に、米連邦準備制度理事会(FRB)の見通しに沿った形で、来年は利下げなしとの見方が強まると、1回程度の利下げの織り込みが解消される分は、米長期金利が上昇することも想定されます。その場合には、米長期金利は2.0%を若干上回る可能性があります(図表4)。

▣ 緩和的な金融政策が継続する中、長期金利上昇は限定的か

もっとも、パウエルFRB議長は、「利上げには著しいインフレの上昇が条件になる」としています。FRBが重視する物価指標のコア個人消費支出(PCE)デフレーターは、過去12か月にわたりインフレ目標の2%を下回って推移しており、期待インフレ率も低迷しています(図表5)。米中の動向などに振らされる可能性はありますが、米利上げ観測が強まらない限り、米長期金利の上昇は限定的とみられます。

国内の長期金利については、すでに米長期金利が2%台半ばだった4月の水準まで上昇しています(図表6)。日銀の2%の物価目標達成が全く見通せない中で、一段の上昇は限定的とみられます。少なくとも日銀の許容レンジ-0.2%~0.2%の中での動きが続くことが見込まれます。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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