米朝首脳会談への幻想は消えたが・・・
歴史ドラマがいよいよ佳境に
朝鮮半島をめぐっては、驚くべきことが次々に起こっています(ただし金融市場は、あまり反応しなくなっています)。戦争にさえ至らなければ、これほど面白いドラマはめったにないと言えるでしょう。
6月12日の米朝首脳会談がどう展開するのか(実現性も含め)、断言できません。ただ確実に言えるのは、米国のトランプ氏、北朝鮮の金正恩氏とも、会談を強く望んでいるということです。よって万が一、12日の開催が厳しくなっても、それは恐らく延期であり、市場はあまり動揺しないと予想されます。
「揺さぶり」というより「衝動」
先週、北朝鮮の敵意を理由にトランプ氏が会談中止を通告しました。しかしわずか1~2日後、予定どおり開催する方向へ舞い戻りました。同氏の揺さぶり作戦というより、衝動と直観のなせるわざです。
歴史が再び動き出したのは、「情」を交えたやり取りのおかげです。会談中止を告げるトランプ氏から金氏あての公開書簡は、会談への未練がにじみ出るものでした。そして、それを受けた北朝鮮の声明文では、トランプ氏を「内心では高く評価していた」と表明されました。同時に、対話を通じて事態を「段階的に」改善すべき旨が率直に述べられました。トランプ氏はそれらに感動し、納得したのでしょう。
(問題の即時解決という)幻想は消え、現実に即した交渉が可能に
とはいえ米朝会談が実現すれば、一番の功労者は、韓国の文在寅大統領です。文氏は米朝の仲介役という立場ですが、南北融和に対する文氏の「ぶれない信念」がなければ、何も始まらなかったのです。
トランプ氏が会談中止を一旦通告した直後には、文氏と金氏の電撃的な緊急会談が行われました。ただ、「完全な非核化」の条件や日程はあいまいなままでした。しかし重要なことは、米朝ともそれに関する解釈の大きな乖離を認識しつつ、会談に臨もうとしていることです。つまりいずれも幻想は抱いていないので、一回目の首脳会談で主張がかみ合わなくても、関係が一気に悪化することはないでしょう。
「共和党支持者はどうみているのか」がポイント
米朝会談が結局実現しそうなのは、米国の内政も背景にあります。つまり、11月の中間選挙(議会選など)でトランプ氏の属する共和党が与党の座を死守するには、既存の支持者をつなぎ止めなければなりません。そして米朝会談については、ほとんどの共和党支持者がそれを支持しているのです(図表1)。
現在、特に下院選で民主党が優勢です。同党が過半数を奪回すれば、トランプ氏はロシア疑惑の件で厳しく追及されます。そのため同氏としては、米朝会談という偉業で劣勢を挽回したいところでしょう。
日本にとって、貿易摩擦は失地回復のチャンス
一方、選挙モードが悪い形で表れているのが、トランプ氏の通商政策です。これについては、保護主義を支持する共和党支持者が多いのです(図表2)。よって米中の貿易摩擦は当分続きそうです。さらに今月、自動車に対する高率の輸入関税を検討すると発表しました。主な標的は日本や韓国、ドイツです。
日本としては、自由貿易への「信念」に基づき、米国の理不尽な主張に堂々と反論すべきです。理性を伴った「情」が有効な場合もあるでしょう。そのようにして米国と渡り合うことができれば、北朝鮮をめぐるドラマでは脇役に追いやられた日本も、世界から(トランプ氏からも)尊敬を取り戻せます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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