マレーシアの驚くべき政権交代を歓迎
一党支配の打破という快挙
5月9日、マレーシアで総選挙(連邦下院選)が行われました。これは同国にとって、また、日本を含むアジアにとって、極めて大きな意義を持つものとなりました。民主主義の希望をつないだのです。
1957年に英国から独立して以来、マレーシアは一党支配のもとにありました。しかし今回、与党の「統一マレー国民組織(UMNO)」を、野党連合「希望連盟(PH)」が倒したのです(全222議席中、過半数の122議席を獲得)。PHを率いて政権交代を成しとげたのが、マハティール・モハマド氏です。
マハティール再登場の衝撃
マハティール氏は1981年から2003年まで首相を務め、マレーシアを近代化へ導いた人です(まだ発展していた頃の日本が手本)。今年93歳となるこの歴史的偉人が、新首相として舞い戻ったのです。
今回の政権交代は、世界中に衝撃を与えています。結局は従来の一党支配が続くと予想されていたからです。というのも、選挙で勝つべくUMNOがあらゆる手法を駆使していたためです。政敵やメディアの弾圧・統制、選挙区割り工作、といった汚い手法の数々です。それにもかかわらず大番狂わせが起こったのは、マハティール氏の人気もさることながら、政権への国民の不満と怒りが背景にあります。
政権交代の背景-汚職疑惑と生活コスト増
UMNOを率いた前首相、ナジブ・ラザク氏らを取り巻いているのは、巨額の汚職疑惑です。マレーシアの国営投資会社「1MDB」が不正に用いられ、約7億ドルがナジブ氏の口座に入金された、との疑いです。政権交代が起こらなければ、ナジブ氏の強権でこの疑惑がもみ消されてしまうところでした。
マレーシアは、シンガポールなど都市国家を除けば東南アジアで最も豊かな国です(図表1)。今の景気も良く、経済成長率は5%台を保っています。しかし2015年の消費税導入(6%)もあり、生活コストが上がっています。そうした不満と政治腐敗への怒りが相まって、今回の政権交代につながりました。
金融市場の反応は冷淡だが
ところが金融市場では、この歴史的かつ民主的な政権交代がさほど歓迎されていないようです(図表2)。実際、マレーシアの通貨であるリンギットは、選挙結果を受けて、一旦軟調な動きとなりました。
これは、新政権の政策が不透明だからです(存在感を増す中国との関係など)。またマハティール氏らは、消費税を廃止し、燃料補助金を復活する、といった「ポピュリズム(大衆迎合)」的な公約を掲げています。それらは、財政を悪化させる恐れがあります。また、同氏も強権的な面を持つ上、「反・欧米」の「ナショナリスト」として知られています。そのため、欧米でのイメージは必ずしも良くありません。
腐敗した政権の終えんは、国の信認を高める
とはいえ、通貨の下落は限定的なものにとどまり、株価は若干上昇しています。選挙後、「ビジネスに配慮した政策を行い、株価を高める」とマハティール氏が述べたことなどが好感されているためです。
また市場でも、この政権交代はマレーシアの信認を(よって投資対象としての魅力を)長期的には高める、という見方が有力です。アジアでは、民主主義がなかなか根づきません。しかし腐敗した政権を民主的に追放することは、アジアの国でも可能です。マレーシアは今回、それを証明してくれたのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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