衆院選における各論点の考え方

2017/10/11 <>

論点は後付けだが

日本の政治を見ていると、諦めの心境に陥るかもしれません。22日の総選挙(衆院選)については、そもそも解散の動機が不純です。野党の再編も性急に過ぎ、深い哲学が感じられません。とはいえ、浮き彫りになった論点に関しては、後付けで持ち出されたにせよ、有権者の主体的な思考が求められます。

なお、選挙結果を都合よく解釈するのが、昨年の米大統領選以降、金融市場の流行です。ただ、この衆院選がどんな結果になっても(与党の悲惨な敗北の場合を除き)、市場の反応は一時的と見込まれます。

憲法改正-9条だけではない

何より重要なのは、憲法問題です。現行憲法に矛盾があれば、時間をかけて、よく議論すべきです。

国民主権、人権、平和主義を柱とする日本国憲法は、素晴らしい理想を掲げています。文章の格調も高めです。しかし、文体や思想はいかにも西洋的で、米国主導で策定された、との印象が拭えません。

そのため、憲法を改正するか、という問いは、戦後の米国追従姿勢から脱却するか、という問題につながります。よって、脱米を志すべき愛国者は、第9条の改正で自衛隊の存在を追認(図表1)、といった程度では満足できません。憲法改正を論じる際には、賛否を問わず、そのような認識が欠かせません。

消費税-何のための増税?

国家の「特権」と言えば、独占的な暴力(軍隊や警察)と並び、税金を取り立てる力(徴税権)です。

そのため、2019年10月に予定されている税率引き上げ(8%→10%)も、本来、衆院選の論点です。ただ、議論は浅いものにとどまっています。与党は、予定どおり増税を実施しつつ、増収分の一部を教育無償化などに充てると言います。他方、主な野党は、増税の凍結や中止を主張します。財政再建が先送りされる点では、いずれも大差ありません。また、増税すれば、消費など景気が一旦冷え込むのは明らかなので(図表2)、与党が政権を維持したとしても、増税がまた延期される可能性は十分あります。

原発政策-良識で判断

違いが見られるのは、原発政策です。自民党などは、原発の再稼働に積極的です。それに対し、主な野党は原発ゼロを主張します(希望の党は「2030年まで」、立憲民主党は「早期に」、共産党は「即時」)。

この点、専門家やメディアには様々な利害が絡みます。よって有権者には、自分の良識で判断することが求められます。原発事故や原発への攻撃は起こり得ない、との確信があれば、再稼働を支持すべきです。他方、少しでも危険が残るかもしれない、との懸念があれば、原発ゼロを目指すしかありません。

選挙後こそ重要

むろん、各政策への賛否は、特定政党への投票に直結するわけではありません。例えば、消費税については与党に賛成だが、原発については野党に賛成、といったケースは、当然あるはずです。そのため、どの党が政権を握ったとしても、全ての政策が承認されたと調子に乗れば、独裁と変わらなくなります。

よって新政権は、個別の政策毎に、国民の多様な意見を考慮せねばなりません。つまり、民主主義を発揮すべき場は選挙だけではないので、その結果を過大評価するのは、愚かなことです。その意味で、衆院選への市場の反応が限定的なものにとどまったとしても、それは案外、賢明な反応だと言えます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会