衆院選における各論点の考え方
論点は後付けだが
日本の政治を見ていると、諦めの心境に陥るかもしれません。22日の総選挙(衆院選)については、そもそも解散の動機が不純です。野党の再編も性急に過ぎ、深い哲学が感じられません。とはいえ、浮き彫りになった論点に関しては、後付けで持ち出されたにせよ、有権者の主体的な思考が求められます。
なお、選挙結果を都合よく解釈するのが、昨年の米大統領選以降、金融市場の流行です。ただ、この衆院選がどんな結果になっても(与党の悲惨な敗北の場合を除き)、市場の反応は一時的と見込まれます。
憲法改正-9条だけではない
何より重要なのは、憲法問題です。現行憲法に矛盾があれば、時間をかけて、よく議論すべきです。
国民主権、人権、平和主義を柱とする日本国憲法は、素晴らしい理想を掲げています。文章の格調も高めです。しかし、文体や思想はいかにも西洋的で、米国主導で策定された、との印象が拭えません。
そのため、憲法を改正するか、という問いは、戦後の米国追従姿勢から脱却するか、という問題につながります。よって、脱米を志すべき愛国者は、第9条の改正で自衛隊の存在を追認(図表1)、といった程度では満足できません。憲法改正を論じる際には、賛否を問わず、そのような認識が欠かせません。
消費税-何のための増税?
国家の「特権」と言えば、独占的な暴力(軍隊や警察)と並び、税金を取り立てる力(徴税権)です。
そのため、2019年10月に予定されている税率引き上げ(8%→10%)も、本来、衆院選の論点です。ただ、議論は浅いものにとどまっています。与党は、予定どおり増税を実施しつつ、増収分の一部を教育無償化などに充てると言います。他方、主な野党は、増税の凍結や中止を主張します。財政再建が先送りされる点では、いずれも大差ありません。また、増税すれば、消費など景気が一旦冷え込むのは明らかなので(図表2)、与党が政権を維持したとしても、増税がまた延期される可能性は十分あります。
原発政策-良識で判断
違いが見られるのは、原発政策です。自民党などは、原発の再稼働に積極的です。それに対し、主な野党は原発ゼロを主張します(希望の党は「2030年まで」、立憲民主党は「早期に」、共産党は「即時」)。
この点、専門家やメディアには様々な利害が絡みます。よって有権者には、自分の良識で判断することが求められます。原発事故や原発への攻撃は起こり得ない、との確信があれば、再稼働を支持すべきです。他方、少しでも危険が残るかもしれない、との懸念があれば、原発ゼロを目指すしかありません。
選挙後こそ重要
むろん、各政策への賛否は、特定政党への投票に直結するわけではありません。例えば、消費税については与党に賛成だが、原発については野党に賛成、といったケースは、当然あるはずです。そのため、どの党が政権を握ったとしても、全ての政策が承認されたと調子に乗れば、独裁と変わらなくなります。
よって新政権は、個別の政策毎に、国民の多様な意見を考慮せねばなりません。つまり、民主主義を発揮すべき場は選挙だけではないので、その結果を過大評価するのは、愚かなことです。その意味で、衆院選への市場の反応が限定的なものにとどまったとしても、それは案外、賢明な反応だと言えます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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