カタルーニャ独立運動への共感と不安
欧州統合に向けて
長い目で見れば、欧州は統合の方向へ進むでしょう。ただし、その過程は平たんではあり得ません。
欧州連合(EU)やユーロ圏の統合深化に関し、旗振り役を務めようとしているのが、フランスのマクロン大統領です。同大統領の支持率は低下していますが、欧州重視の信念は、全く揺らいでいません。
マクロン氏の欧州統合プランは、多岐にわたっています。その中で、合意が比較的得やすい分野から推進すれば、統合を徐々に既成事実化できるでしょう。例えば、防衛や難民対応における連携強化です。
スペイン分裂の危機
しかし欧州統合に伴って、国家や民族に執着するナショナリズムが、様々な形で噴出するでしょう。
今、文字どおり国家の分裂を招きかねない民族運動が、スペインで生じています。カタルーニャ州による、分離独立運動です。10月1日には住民投票が行われ、独立賛成が約9割に達しました(ただし、独立反対派の多くは棄権したため、投票率は約4割。また、中央政府は投票の結果を無視する意向)。
大都市バルセロナを擁する同州は、独自の伝統や言語を誇っています。そのため、独立を切望する人にとってナショナリズムとは、スペインというより、カタルーニャへの帰属意識を意味しているのです。
純粋な情熱と利己的な動機
独自の共同体を復興するという運動は、特に若い人の情熱をかき立てます。カタルーニャ州の独立運動でも、学生らの活躍ぶりが印象的です。とはいえ、多くの年配者も、独立は長年の悲願だと言います。
ただ、利己的な動機もあります。同州の経済規模はギリシャなどを上回り、生活も比較的豊かです(図表1,2)。そのため同州で徴収された税金のうち、相当部分が同州以外へ分配されています。そうした中、2012年のスペイン財政危機は同州にも打撃を与え、再分配への不満と独立感情を刺激したのです。
双方とも正しい
この問題が難しいのは、独立派と反独立派(中央政府を含む)に関し、一方が善で他方が悪、とは決められないからです。「自分のことは自分で決める」という民主主義に立てば、独立派が正しいのです。
同時に、「法の支配」も民主主義の根幹です。そして国の分裂を否定する憲法に照らすと、今回の住民投票は違憲です。にもかかわらず強行された投票の結果を、中央政府が無視するのは当然、となります。
双方に正当性がある以上、対話と交渉により妥協を図るしかありません。中央政府としては、カタルーニャ州の独立を断固拒否しつつも、財政などの面で、同州の自治権拡大を認めることになるはずです。
欧州の動乱は続く
しかし現在、中央政府のラホイ政権は、高圧的な態度を改めません。このまま独立運動を弾圧すれば、衝突は決定的となります。独立派は右派に加え急進左派も含んでおり、大規模なストライキなどが継続されるでしょう。そうなれば、財政危機後に立ち直ったスペイン経済も、減速を余儀なくされそうです。
独立の動きは、ベルギーやイタリアなどでもくすぶっています。それらは今後、次々に顕在化すると予想されます。欧州の統合で、既存国家の自明性が薄れるからです。マクロン氏らが欧州統合を推進するのは、正しいことです。しかし、その過程で多くの動乱が生じ得ることを、覚悟せねばなりません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会