中国悲観論を超えて

2016/01/20 <>

中国は「順調に減速」

中国経済については悲観的な論調が好まれますが、よくみればむしろ順調と言っていいほどです。

実質国内総生産(GDP)は昨年、前年比6.9%増と、一昨年の同7.3%増から減速しました。0%台とみられる日本の成長率に比べればはるかに高いものの、7%を割り込んだのは25年ぶりとのことです。

ただ、成長率の低下自体を悲観する必要はありません。各部門の傾向が重要で、特にサービス業の安定的な伸びに注目すべきです。これは、製造・建設偏重からの脱却という構造変化に沿っています。

小売売上や住宅販売なども回復しつつあります。データが信用できないと言われますが、賃金や消費が増えているのは確かです。そのことは、中国で雇用を行っている日本企業や日本の百貨店・観光地が一番よくわかっています。中国株は冴えないものの、株価が実体経済と連動しないのは日本と同じです。

AIIBの理念は正しい

中国の話題が絶えないのは、その影響力が高まっているためでしょう。年明けからの日本株の下落も中国不安が原因と言う人がいます。中国の景気減速の前にはアベノミクスなど無力ということでしょうか。

中国の影響力を象徴するのが、今月業務を開始したアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。資本や人材で中国が主導する国際金融機関ですが、日本、米国、北朝鮮を除く大半の主要国が参加しています。

AIIBは、アジアのインフラ(生活・生産の基盤)向けに融資を行います。そうした資金需要は巨大であり、中国主導であることは、融資先である新興国の悩みを理解しやすいという利点もあるでしょう。

その理念や目的は正当です。よって日本や米国も、AIIBの足を引っ張るべきではありません。アジアにおける生活水準と人権の向上という一点を判断基準とし、必要であれば積極的に協力すべきです。

中国と台湾

ただし、中国が超大国化する中で、日本など周辺諸国は中国との関係を再構築する必要に迫られます。

台湾では今月、総統(大統領)・立法院(国会)の選挙が行われ、前評判どおり野党の民進党が圧勝しました(新政権発足は5月)。このため、中国と台湾との間で緊張が強まる可能性がないとは言えません。

民進党は伝統的に、台湾の独立を党是としているからです。また、台湾の多くの人は民主主義に誇りをもっているようで、中国とは違う国だと考えています。とはいえ新総統になる蔡英文氏は穏健な路線を志向し、台中双方が受け入れられる立脚点を探ると述べています。超大国である中国との対立は望まないが、台湾の固有性は守るということでしょう。こうした姿勢は、日本にも参考となるかもしれません。

日本や米国はどうなのか?

以上のように中国は今や、色々な面で世界の主役になっています。しかしだからと言って、中国の問題ばかりをやたらと騒ぎ立て、日本の問題(アベノミクスの行きづまりなど)から注意をそらそうとするのは賢明とは言えません。

また、もう一つの主役である米国の経済・政治の問題を軽んじることもできません。米景気は昨年終盤、失速が鮮明になったようです。にもかかわらず12月、利上げを始めてしまいました。その影響がどのように表れてくるのか(例えば、米国株安・原油安)。金融市場では今後、このことの方が中国の景気減速よりも重要だと認識されるでしょう。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会