中国経済、今度こそ大ピンチ?:すべては共同富裕のために

2021/10/25 <>

成長失速の三つの要因

中国は、押し寄せるピンチを幾度も乗り越えてきました。この数年間では、米国との貿易摩擦、コロナウイルスの第1波などです。経済成長の失速という現在のピンチも、おそらく中国は克服するでしょう。

たしかに、7-9月期の国内総生産(GDP)成長率は前年比4.9%と、年前半に比べると失速しました(図表1)。主な要因は、ウイルス感染の再拡大、住宅市場の不調、電力制限の三つです。とはいえ今、感染の爆発的拡大は、抑止されています。ほかの二つも、経済改革に伴う過渡的な試練にとどまりそうです。

住宅市場は改革の途上

まず、住宅については、「恒大集団」など開発業者の資金繰り難で、建設が滞っています。住宅を購入しても無事に引き渡されるのか、との不安もあり、中国の住宅取引額は足元、前年比2割近く減っています。

それでも、政府や中央銀行は、開発業者の安易な救済を控えています。業者に対し、無謀な借入れによる事業拡張を戒めるためです。また、それらの経営不安が金融危機につながる可能性は低い、と見ているためです。さらに、市場の過熱を冷まし、住宅を手頃な価格に抑えることは、もともと政府の念願です。

石炭脱却も正しい改革

次に、電力制限については、石炭不足が最大の原因です。中国の発電における石炭依存度は、低下傾向にあるとはいえ、まだ約6割を占めています(図表2)。その石炭が、様々な要因で不足しているのです。

短期的な要因としては、山西省での洪水による炭鉱閉鎖などが挙げられます。しかし、もっと大きな要因は、構造的なものです。中国政府は近年、大気汚染の元凶とされる石炭から、よりクリーンなエネルギーへの移行を推進してきました。それを進めるべく石炭の生産を抑えてきた結果が、今年の石炭不足です。

クリーン化と効率化へ

電力制限のため工場が稼働を抑制したことなどから、中国の鉱工業生産は9月、前年比3.1%増にとどまりました。現在、炭鉱再開などで石炭を増産する動きも出ていますが、電力不足の解消には遠そうです。

それは、天然ガスなど、ほかのエネルギー源も不足している上、石炭については、限定的な増産にとどまる見込みだからです。環境や健康を重視する以上、「脱・石炭」の流れを逆転させられません。とはいえ、やや長い目で見れば、エネルギーのクリーン化や効率化によって、中国は電力不足を克服できるはずです。

共同富裕を改めて強調

10-12月期も、中国は低成長となる見通しです。ただし、国民の物質的な豊かさを特に反映する個人消費は、底堅さを示しています。そのため、GDP成長率の低下を、中国政府はさほど問題視していません。

10月15日、習近平主席が重要な論説を発表しました(China Neicanに英訳掲載)。これは、物質・精神両面の豊かさを増す改革を進めることで、今世紀半ばまでに「共同富裕」を基本的に達成する、という決意表明です。そうした希望に満ちた長期の目標があるがゆえに、中国はピンチに耐えられるのでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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