米インフラ投資の意義:トランプ氏の失敗を踏まえて

2021/04/19 <>

トランプ氏は期待外れ

米国のトランプ前大統領は、多くの人を失望させ、再選に失敗しました。期待外れだったことの一つは、「10年間で1兆ドル規模のインフラ投資」という公約に関し、目立った実績を残せなかったことです。

今年1月に就任したバイデン現大統領は、この点、極めて意欲的です。「8年間で2兆ドル超のインフラ投資」との計画を、3月末に発表したのです。規模や詳細については調整余地があるものの、主な投資案は、高い支持を得ています(図表1)。よってバイデン政権は、その大半を実現することができそうです。

投資が急務である理由

インフラ(インフラストラクチャー)とは、経済・社会の基盤を支える公益的な施設のことです。米国が経済活力を保ち、国民の幸福を増進し、また、躍進する中国と競争するには、その整備が欠かせません。

米国では、道路や橋、鉄道などインフラの老朽化が著しく、その点では、中国、東南アジア、日本の大都市の方が、よほど先進国的です。また、5G(第5世代)通信網や電気自動車といった新技術の普及でも、米国は、中国に後れを取っています。バイデン政権は、そうした問題に正面から取り組む姿勢です。

財源を確保するには?

そのような問題認識は、トランプ前政権・共和党も有していました。しかしインフラ投資は、大型減税、海外製品への高関税、移民抑制など、トランプ氏のほかの公約と比べ、優先順位において劣後しました。

障害となったのは、投資の財源です。大規模なインフラ投資(→政府支出の大幅増)を行うには、国債増発による借入れ増(政府債務増)か、増税による歳入増が必要です。しかし共和党は、思想的かつ伝統的に、政府債務増と増税の両方に消極姿勢を取ります。そのためインフラ投資は、もともと困難でした。

現政権は増税案を表明

一方、バイデン政権・民主党は、そのようなイデオロギー(政治経済思想)とは、明確に距離を置いています。それが功を奏し、歴史上も特筆されるべきインフラ投資が、現実のものになりつつあるのです。

実際、バイデン政権がインフラ投資の財源として検討しているのは、企業や超富裕層に対する増税です。特に企業利益への税率については、トランプ前政権による減税の半分を巻き戻す方針です(トランプ前政権は、従前の法人税率35%を21%に引き下げ。バイデン政権の案では、これを28%に引き上げる方針)。

株式市場は冷静に反応

法人税増税は、直接的には企業利益を減らすため、通常は株価への悪材料です。ところが、やや意外にも、バイデン政権が増税案などを発表した後、米国の株価指数は、過去最高値を更新しています(図表2)。

理由としては、経済力向上などインフラ投資によるポジティブな効果は、増税によるネガティブな効果をはるかに上回る、と考えられることなどが挙げられます。このように市場と国民から支持を得ている投資案が実現すれば、2024年の大統領選挙でバイデン氏が再選を果たす可能性も、大いに高まるでしょう。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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