すでに勝負あり?:米中覇権争いの結末

2021/02/01

早くも感染前の成長ペースに

米国のトランプ前大統領は、中国の勢いを止められませんでした。2018~19年の米中貿易摩擦を、中国は乗り切ったのです。そして世界的なコロナウイルス危機の中、この国の強さは際立つばかりです。

中国も、昨年冬を中心にウイルス感染が広がり、経済成長率は、1-3月期に大幅なマイナスとなりました。しかしその後は順調に回復し、10-12月期、早くも感染前の成長ペースに戻りました(図表1)。昨年1年間では、前年比プラス2.3%です。一方、米国の年間成長率は、マイナス3.5%に沈みました。

景気回復の背景をめぐる差異

年間の経済成長率は、前年の生産水準をベースに算出されます。そのため、昨年の水準が低かっただけに、中国は今年、8%前後の高成長が予想されます。米国についても、プラス成長に戻る見通しです。

ただし、景気回復の実質的な背景は、大きく異なります。中国は、ウイルス感染をおおむね抑制したことから、経済の正常化が進んでいます。一方、米国は、感染収束には程遠い状況です。米景気の先行きに関する現在の楽観は、ワクチンの普及といった希望的観測を含む、不確かな前提に依拠しています。

投資家や企業も中国を高評価

中国においても、地方政府や企業の過剰債務、一部地域の不動産バブルなど、多数のリスクがあります。それでも、巨額の財政支出や超金融緩和に頼る米国に比べ、中国のリスクが大きいとは言えません。

各国の投資家や企業は、中国経済の強さを素直に評価しています。これを受け中国株は、米国株を上回る実績を示しています(昨年、中国CSI300は27%上昇、米S&P500は16%上昇)。人民元も対ドルで堅調です。また、海外直接投資で、中国向けは昨年、米国向けを超え世界最大となりました(図表2)。

各政府も中国の経済力を考慮

各国の政府も、中国の経済力を、何より考慮せざるを得ないようです。昨年当初、日本政府がコロナウイルスの脅威を軽視し、入国制限などが遅れたのも、中国からの観光客減を恐れたのが一因でしょう。

昨年11月には、日本、東南アジア諸国などが、中国を含む自由貿易圏に関し署名しました。経済の考慮を、政治・軍事の問題よりも優先したのです。12月には、欧州連合(EU)が、中国との投資協定で合意しました。少数民族などの人権問題を脇に置き、EU企業の中国市場参入を促すことを優先したのです。

バイデン政権の対中政策は?

その投資協定に関しては、米国の政権移行チームが、延期することを望みました。EUは、それをほぼ無視し、中国との協定合意を急いだのです。このことが表すのは、欧州に対する米国の影響力低下です。

それでも、米国の対中政策は、欧州との連携を軸に展開されるでしょう。米国単独では、中国の勢いを止められないからです。もちろん、中国が繁栄するのを妨害する権利は、誰にもありません。しかし、人権という普遍的価値を絶やさぬよう、バイデン米政権は、中国に対し言うべきことは言うはずです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ