弾劾騒ぎとブレグジット:米英のシンクロナイゼーション

2019/11/12 <>

似たもの同士

米国と英国が似ているのは、文化や言語だけではありません。経済や社会の長所・短所も相当似ています。そのため今、米英の政治がシンクロして(同時に)混迷を深めているのは、偶然ではありません。

米国では、ウクライナ疑惑に関し、トランプ大統領の弾劾(議会による解任)調査が民主党主導で本格化しています。英国では、ブレグジット(欧州連合(EU)離脱)の協定がまとまらず、期限はまたも延期されました(10月末→来年1月末)。米英に共通するのは、党派対立による政治の機能不全です。

ウクライナ疑惑

ウクライナ疑惑とは、来年の大統領選での民主党有力候補(ジョー・バイデン氏)を貶(おとし)めるため、トランプ大統領が職権を乱用したのではないか、というものです。これは、次のようにまとめられます。

今年の夏、トランプ氏はウクライナの大統領に対し、バイデン氏の息子(以前、同国の天然ガス会社の役員)にかかわる不正疑惑(根拠は特になし)を調査するよう求めました。この求めに応じた場合に限り米国はウクライナに軍事援助などを提供する、という取引をトランプ氏が試みたのか、が焦点です。

英国は総選挙へ

ブレグジットについては、延期するくらいなら「死んだ方がまし」、とジョンソン英首相は言っていました。しかし結局、同首相は国内で離脱協定をまとめられず、EUへの延期要請を余儀なくされました。

行き詰った状況を打開すべく、12月12日に英議会(下院)の総選挙が行われます。ブレグジットの行方を左右するこの選挙は、近年の英国で最も重要な選挙になりそうです。直近調査(図表1)ではジョンソン氏の保守党がリードしていますが、それがどう選挙結果に反映されるか、予測はまだ困難です。

金融市場は静観

ただ、こうした米英の混迷に対し、金融市場はさほど反応しなくなっています。トランプ氏の弾劾が成立する可能性は極めて低く、ブレグジットについては、「合意なき離脱」の可能性が低下したからです。

実際、米大統領の弾劾成立には上院議員の「3分の2」以上の賛成が必要ですが、これはまず無理でしょう(上院は現在、共和党が多数派であるため)。また、再三のブレグジット延期で明らかになったのは、英国(ジョンソン氏を含め)・EUとも「合意なき離脱」に踏み切る度胸はない、ということです。

反動で左傾化へ?

しかし米英の混迷は続くでしょう。米国ではトランプ氏を支持する人としない人、英国ではEU離脱を望む人と残留を望む人の間で、国のあるべき姿に関し共通認識を築くのが困難になっているからです。

米英は、自由な資本主義が最も高い純度で実現した国々です。しかしその副作用などで格差(図表2)が広がり、国のまとまりが無くなりました。そうした反省から、米英でシンクロするかのように左派(社会主義寄り:米国は民主党急進派、英国は労働党)の政権が誕生したとしても、不思議ではありません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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